第5回 手づくり法制審議会議事録(12月分)

日時:2021年12月11日(土)15:00~17:00

場所:東京都文京区全労会館 3階会議室

パネリスト:

[ゲスト]古賀礼子弁護士

司会 宗像充

松村直人/加茂大治

配信 佐藤創/羽田ゆきまさ

書記 大山直美

内容:前半「やりなおし!法制審」動画配信15:10~16:00

後半 参加者と議論、勧告策定

議題:既に公開された、法制審議会家族法制部会第7回会議 議事録をもとに、市民レベルで検証する。

松村氏による論点の提示と見解

1)法制審議会とは法務省が設置する、法律の立法や答申の役割が与えられた重要な会議である。

2)12月11日現在、第9回まで開催されたが、公開された議事録は第7回までなので、当団体として今回扱うのはここまで。

3)相変わらず社会として「家族をどのようにデザインするか」の議論をしないので法制審の答申は作れない。

4)松村氏の情報公開請求により「法政審全体の議論状況」という資料が入手できた。その資料によると、2022年1月より2巡目の検討が開始され、その後、中間試案、パブリックコメント、要項案とりまとめ、が行われる見通しであるという。

5)法政審で親権を巡る婚姻内外の問題の解決が見込めない今、政治が介入すべきである。

古賀氏の見解

戦後すぐの民法改正議論の真相について、『法律時報 第31巻11号10月号 1959年刊』の座談会報告が資料として紹介された。

戦後の民法改正時に、婚姻中の父母の意思が子の養育を巡って一致しない場合、どのように解決するか、という法的手当てがないという問題がはっきりと意識されていたにもかかわらず、戦前から長く続いてきた、子育てをしない家父長の立場の発想から、家の中のことを他所で決めることは男の沽券にかかわる、ということや、実際には、男女不平等の実態のあまり細君が家裁にかけ込むことはありえないだろう、といった考え方のもとに、立法不作為が今日まで脈々と続いてしまった経緯がある。

70年前に憲法に男女平等が謳われたが、婚姻制度において全く実現されていない現状があるわけで、今こそ、法改正をするべきである。部会長の大村氏は『民法読解 親族論』の執筆者であることからも、婚姻制度にも絡む法制審で審議されている問題は、間違いなく現行の民法が放置してきたために起きている問題であること知っているのであるから、立法不作為にメスをいれなくてはいけないことを、法政審メンバーの誰よりも理解している。だから、法制審の議論の進行について希望を持っている。

宗像氏の見解

法政審での議論は限界があることがわかった。

連れ去り、親子引き離しの裁定について、裁判所の判断には問題があることが全く法政審メンバーに意識されなかったし、そもそもこれを議論する場としても認識されていなかった様子。婚姻内外で、どうやって子を社会で育てるか、議論が必要。双方責任という言葉だけでの議論が無理になってきたのが明白。赤石氏、戒能氏は、養育するのは同居親だけという想定しかしないが、その前提の上に議論が構築されているのは全く不当である。

加茂氏の見解

今更言っても仕方がないことだが、法政審の人選が誤っているので、そもそも私たちが訴えていた問題が解決しない。

戦後、一時的に共同親権の時期を作った暫定民法は、当座、新憲法の理念に民法の整合性を取るための捨て案であったのではないか。民法改正を主導した我妻榮先生は、概念法学を徹底的に否定し、実生活に「内在する生きた法」を理想とする立場であった。当時、共同親権の理念も現実も社会の中にまだなかったので、彼の立場からすると法が主導するパラダイムチェンジを避けた可能性がある。GHQがいなくなったら、新憲法は破棄できるとも考えていた痕跡もあり、彼の立場からすると、現民法はその先取りとして当時の生活感情になずんだ「単独親権制度」を採用したと考えられる。

我妻先生がもし生きていたら、女性が社会に進出を果たし、離婚も急増し、通信、移動手段が飛躍的に拡大した現在、その趨勢を受けて離婚後単独親権は共同親権に変えた方がより社会の実情に適合すると考えるのではないか。

オンライン配信後

参加者から:原田委員が第6回法政審で参考資料として、「イギリスは共同親権・共同養育をDV保護の観点から見直していること」の根拠として出した資料は、2021年6月にイギリス司法省が出した資料Assessing Risk of Harm to Children and Parents in Private Law Children  Cases  (通称ハームレポート)の文献レビューの一部を翻訳して提出したに過ぎないもので、原田委員の、親権制度そのものを見直す動きがあるから日本も共同親権・共同養育を進めるべきでないという主張の根拠には悪意がある。実際、ハームレポート発表半年後、2021年11月発表のイギリス司法当局発表の文書(”What about me ?”)にも、両親の別離があったとしても安全上の懸念がなければ子供は両親と関係を続けるべきことが明記されている、といった指摘があった。

次回は学習会を実施します

次回は1月8日(土)15:10から17:00まで @全労連会館

以上

勧告は以下から
https://k-kokubai.jp/2021/12/30/tedukurikankoku5/