私たちが目指すもの~訴訟の目的

国を被告として起こす民事訴訟を国家賠償請求訴訟と呼びます。私たちはこれまで国会議員に立法を促したり、裁判所に直接運用の改善を訴えたり、啓発活動をしたりと、別居親の無権利状態をさまざまに訴えてきました。しかし、連れ去りや引き離し被害はなくなるどころか増え続けています。国会が法改正を先延ばしするなら、その状態が違法であること(立法不作為)を裁判所に認めさせるしかありません。

現在、国もいつまでも今の民法を変えないでいることに疑問を持ち始めています。民法改正には専門家による法制審議会の議論を経る必要があります。しかし、当事者不在の議論で法律が変わっても、問題が解決するとは限りません。

単独親権制度を温存させて問題を放置させてきた国の責任を問い、失われた子どもとの時間の償いを求める、それがこの訴訟の目的です。勝訴は法改正に直接結びつきます。しかし勝つだけが目的ではなく、裁判の過程で当事者の抱える権利侵害について、具体的に解決に至るための論点を提示し、訴訟を通じて訴訟を武器に世論に訴えかけること、それがこの訴訟の意義です。

訴訟の論点~「親の権利」訴訟

単独親権という制度の問題で、別居親が無権利状態になることについて、不平等の格差是正を掲げて共同親権運動を私たちは進めてきました。

また、子どもの権利や子どもの福祉という言葉だけが先行しても、その解釈は様々です。年少者という意味の「子ども」ではなく、親との対語としての「子ども」の権利を、親の権利を抜きに議論しても意味がありません。

子どもをなした親の権利と責任を否定することは誰もできません。子育ては憲法13条の幸福追求権に由来する親の権利だからです。

婚姻中と未婚・離婚時で親の子育ての権利が現実的には違うのは不平等です(憲法14条違反)。その主因は親の権利を明示しない現行民法と単独親権制度にあります。非婚を選んだために、相手の養育の責任を問いにくい同居親も単独親権の被害者です。

親どうしの法的地位の違いにかかわらず、「親の権利は固有のもの」ということを、この訴訟を通じて確立したいと思います。親として引き離された子どもに何を伝えたいかと聞かれれば、「あなたの問題は社会の問題」というメッセージを私たちは選びます。

子どもとの時間は取り戻せません。でも、子どもの心を取り戻すための入場チケットを私たちとともに手に入れましょう。