【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 5】

2021年12月30日

法務大臣 古川 禎久 様
法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様
法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

                     長野県下伊那郡大鹿村大河原2208 

                     任意団体 手づくり民法・法制審議会

私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メンバーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行して、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。

2021年12月11日に当団体で、法務省法制審議会第7回の議論をもとに、第5回「やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(羽田ゆきまさ報道局)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。

「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」

 国の法務大臣の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。

 そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告、及び質問いたします。

【勧告1】

単独親権制のために、離婚によって親権をもつ親はひとりになります。この制度は、単に離婚によって、非親権者が親権の剥奪・喪失と等しく扱われるため、大変な憤りと理不尽を覚えますので抗議致します。これは、婚姻内外の親の養育格差の問題ですので、必ず議題にのせて下さい。

【勧告2】

第7回法制審にて原田委員より2点資料の提出がありました。

①長谷川京子 エビデンスは「共同」から安全へ、養育法制の目標の転換を支持している

~英国司法省報告に関する文献レビューから~

②英国司法省報告に関する文献レビュー(日本弁護士連合会 両性の平等に関する委員会 仮訳)

③の資料は、2021年6月にAssessing Risk of Harm to Children and Parents in Private Law Children  Cases (通称 ハームレポート)という資料と共にイギリス司法省から発表されたものです。原田委員は、そのうち、「DVと子どもをめぐる家族法についての文献レビュー」から抄訳を提出しました。

①の長谷川京子氏文書はこのイギリスの資料を根拠に、イギリスでは「離婚後共同親権制」だと、DVをする親が子どもに関わることが危険だと認識されたので、共同養育や双方責任をもつことは現在見直されている。日本での面会交流論は慎重になるべきだという主張をし、原田委員も、それを支持する発言をしています。(議事録6ページ)

しかし、この資料は、DVする親が、もう一方の親や子供に関わることの危険性を示す文献レビューであり、「イギリスが離別後の親子の交流の見直しを現在しているから、日本も安易に離婚後共同養育、双方責任をもたせることは慎重にならなくてはいけない」という主張の根拠にはなりえません。

提出された資料①と②において日本語のタイトルは、『面会交流等離別後の子の養育に関する裁判の評価報告書~子どもと親の安全・安心の観点から~』と書かれておりますが、

原題は”Domestic  abuse and private  law  children  cases   A literature  review ”であり、直訳すると、『DVとこどもをめぐる家族法  文献レビュー』になりますので、悪意ある意訳をしていると言わざるを得ません。

ハームレポートの5ヶ月後に発表された、2020年11月発表のイギリス司法当局による”What  about me?  Reframing support  for Families following  Parental separating ”条文 No.7においても、安全上の懸念がなければ、子どもは両方の親と親密な関係は築くことができるし、一方の親がそれを止める権限がないことが明記されております。

実際のところ、イギリスの運用ではDVのあるケースを法的に扱う前に、初期にふるい分けすることが重要視されていて、DV問題を抱えていないケースは離婚後も親子は直接交流をするのが前提です。

ぜひ共同養育反対の方々の主張に、絶対に騙されないで頂きたいと思います。

同居親が非同居親のDVを一方的に言い立てても、合理的なDVの審査が警察や裁判所で全くないために、別居親と子どもの面会交流がなされないケースが多数あることを繰り返し申し上げてきましたことを、再度申し上げさせて頂きます。

【勧告3】

第5回法制審に参考人として召致された大阪経済法科大学の小川富之参考人は、第5回議事録によると「離婚後の子どもと父母の交流が強調、協力して交流が続けられれば子供の利益になるということについて一切否定するものではないということを前提としてお話をしていきます」(40ページ)と言いながら、2006年の共同親権法は2011年に法改正されて、養育時間を均等に配分したことが非常に大きな問題を起こし、紛争性が増大したので(44ページ)、「親の権利の軽減、払拭へというふうな方向に進んでいる」ので、共同養育に疑議を唱えています。

ちなみに、参考人招致と同じ月に、小川富之氏は東京新聞で日本での共同親権に反対する主張をしました。

しかし、2021年12月14日に報道されたオーストラリアの シドニーモーニングヘラルド紙 (The Sydney Morning Herald )

(URL:https://www.smh.com.au/world/asia/emotions-are-running-high-japan-and-australia-face-off-over-child-abductions-20211213-p59h96.html)には小川富之氏の主張を完全に否定し、オーストラリアの2011年の法改正は、子供の権利を「ほんの少し」修正し、「子どもを危害から守る必要性」をより重視するになっている、と書かれています。

このような虚偽を主張する参考人と、それを支持する委員が法制審のなかに複数おられることは、この法制審の答申を出す上で大変に有害であることを、意識して頂きたいと思います。

間違い、もしくは虚偽の根拠に基づく議論が継続し、中間報告や、答申がなされることは、絶対に許せません。私たちの勧告を真面目に読んで、御考慮頂きたいと思います。

この勧告書は請願法に基づき、委員会審議時に各委員に配布回覧してください。