第6回 手づくり法制審議会議事録(2022年2月分)

日時:2021年2月12日(土)15:00~17:00

場所:東京都文京区全労会館 3階会議室

パネリスト:

[ゲスト]福田雅章先生(一橋大学名誉教授)

司会 宗像充

加茂大治/佐藤創

配信 羽田ゆきまさ

書記 大山直美

内容:前半「やりなおし!法制審」ライブ配信15:10~16:00

後半 参加者と議論、勧告策定

議題:既に公開された、法制審議会家族法制部会第8回会議 議事録をもとに、市民レベルで検証する。

 ~議論の前提として~

★2月12日現在、第10回まで開催されたが、公開された議事録は第8回までなので、当団体として今回扱うのはここまで。

★養子縁組についての議論は、法制審議事録第8回の最後の方に少し出ただけなので、次回の議事録公表を待って、当会での議論をする予定。

★家事手続法における子どもの意見表明というものは、15歳以上は聞き取りをしないといけないことにはなっているが、裁判手続きにおける子どもの主張の取り入れ方は、裁判官の裁量に任せられている。

福田雅章氏から、「子どもの意見表明権」の解説と問題点についてレクチャー頂いた。

・福田氏より(配布資料「子どもの意見表明権」)

意見表明の前提には、何の圧力も受けることがない環境と状況が保証されるべきであり、これが保証されない意見表明は全くの無意味である。

大人は、主体性をもって自己決定し、不都合は自ら排除することができるが、未成熟な発達段階にある子どもには無理であって、子どもが理性をもって生きられることを目指し、親も社会も後押しする必要があることを認識すべきだ。

子どもは理性的存在の前段階であること。この200年の間に、あらゆる人権が理性的存在として法が作られてきたことに、現在破綻が生じてきている。

「人間が自分らしく生きることが人間固有の尊厳」と考えるのが近代の考え方であった。しかし、理性的人間像にこだわるあまり、子どもに尊厳が与えられなくなるという問題がでてきた。

人間は必ずしも理性的なものではなく、「動物的人間像」としてとらえることで、子どもにも主体性をもとめることができるので、意見表明権を導き出すことができる。また、この、「動物的人間像」は、大人になって消えるものではなく、成人になっても、時と場合によっては「動物的」側面は保持すると考えてよい。

「愛」が子どもの主体性、ひいては自己決定の力を育てる。また、子どもの呼びかけに対して、親が無条件に受容することが、子どもの意見表明を可能にするし、そこを親が一緒に考えることが「尊重」することになる。

弁護士法には、弁護士は人権を守るべき存在であることが明記されているにもかかわらず、多くの弁護士は子どもの人権を踏みにじっていることを意識しなければいけない。

この20年間で、子の権利を表現するときに、参加権、主体性、独立性という表現は使われなくなっており、現在、国連で言われているのは、「子どもがエンパワーされながら意見表明をすることの必要性」である。

よって、家裁の裁判制度としては、子どもが両親二人の愛を受けていることを保障する制度になるよう、全てを作り変える必要がある。

例えば生活保護制度は、金だけ渡す話ではなく、話し相手(相談相手)や、孤立しがちな人間関係をいかに保障するか?ということも含まれるのである。

共同養育が担保されれば、現行の親権制度について触れなくても構わないはずである。親二人が子を愛し、育てることについて、子どもが親を選択する問題ではないことを意識する必要がある。

生物学上の親子の関係をつくる権利が意識されなければならない。

子の養育権、被養育権は世界的に認められている権利であるが、子の養育権をどうやって実現するのか、考える必要がある。悪い例として、「川崎市子どもの権利条例」において子どもが愛される権利があると謳っているが、これは、愛されることを単に義務化しているに過ぎず、批判がある。理由は、利益説的権利(=地位・資格だけをもっている権利)といって、愛される「地位」があると考えられるべきものである。愛されることを義務化したところで、子どもが自分で実現できるものではないからである。

他方、子どもが自ら主体として行使できる唯一の権利が、「子どもの意見表明権」である。子が自由に意見表明するためには、恐怖や、圧力が絶対に無い状態を作らないといけない。ちなみに、アメリカでやフランスでは、子どもの意見表明権が、ある一定程度は実現しているのが現状。

加茂氏の見解

「子どもの意見」は、概念操作が可能なもの、つまり語る側の都合によっていかようにも解釈できるものとして議論されているが、そもそも子供の人権は、属人的でありながらも、父母(保護者)と子との関係性において生じる、間主体的なものであると思う。一部の委員は、こうした「子供の人権」の特性を理解していないのか、あるいは理解していないふりをして、議論を我田引水的に誘導しようとしているようにしか思えない所にも問題があると思う。

・佐藤氏の見解

成長段階に応じて、意見の聴取が必要であろう。

人格未形成の段階では、子の記憶や意見を聞いても、本当の子どもの気持ちは聞き取りできない。

・宗像氏の見解

議事録によれば、子の意見表明を手続きに入れられるかどうかについて議論しているが、同居親に操作されて、子どもの本音は自由に表明できる状況にない、という実態が全く知られておらず、共通認識自体が全くないのが、家裁の現状であり、子の意見をどのように取り入れるかは、大人が考えるべきもので、子どもに責任を負わせてはいけない。

法における結婚や養子は、ステータスを与える行為である。結婚が正社員就職のように機能しているが、今後は実質が問われていく方向に向かうだろう。

単独親権は、親権を国に認めてもらう制度で、片方の親だけに親権を持たせることは、子どもの権利を侵害している。

また、権利は、国に認めてもらわないと、発生しないという仕組みになっていることは問題である。

子どもの代理人制度は、裁判所の裁定のための、責任回避に利用されているのが現状で、子どもの意見表明のためには、全く機能していないと言わざるを得ない。

録画配信後、質疑応答と意見交換が行われた。

次回は3月12日(土)15:15から17:00まで @全労会館

【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 6】

2022年3月3日

法務大臣 古川 禎久 様
法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様
法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

          任意団体 手づくり民法・法制審議会(担当・宗像 充)

私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メン
バーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行し
て、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。
2022年2月12日に当団体で、法務省法制審議会第8回の議論をもとに、第6回「
やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(共同親権運動チャンネル・羽田ゆきまさ報道局)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。

「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」(2021年 10~12月分)
https://www.youtube.com/watch?v=wfv_T-g4QzM
https://www.youtube.com/watch?v=7-Al2146qDY&t=6s
https://www.youtube.com/watch?v=qdsn7z1MYP0&t=87s

法務大臣の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。
 そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指
摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告いたします。

【勧告1】
「子どもを産んだ生物学上の父母が、仮に離婚や子との別離を経たとしても、原則として父母の子を養育する権利・義務が損なわれてはならない」、という点について議論してください。第1回~8回(10月19日開催)までの議事録を確認しておりますが、この点について、根本的に議論された形跡は一度もありません。この議論をせずに、子の養育についての話し合いをしても、不毛とあると言わざるを得ません。

【勧告2】
単独親権制度のため、子どもの素直な意見表明が担保できない実情に目を向けてください。
子どもは、同居親のみに事実上の生存権を握られている中で、別居親への慕情を安心して表明できるとお思いですか。誰にも抑圧されない、子どもの本音を聞き取る方法が必要で、そのための最初の1歩が共同親権に移行することです。

【勧告3】
法制審議会では、離婚後の子の養育について、各論に対する議論の集積によって養育問題の全体をまとめようとしていますが、これまでの会議において、子の養育という問題は、親権制度に触れずには法改正に向けた議論に展開していかないことが、既に一部の心ある委員の中では意識されています。すぐに、親権制度についての議論を始めてください。

この勧告書は請願法に基づき、委員会審議時に各委員に配布回覧してください。