共同親権革命「どうして日本は非難される?」レポート

令和3年9月14日に単独親権違憲訴訟の第5回公判があり、その後、議員会館で「どうして日本は非難される?」と題して院内集会を行いました。

約70名程度の方々にお集まりいただきました。

また、嘉田由紀子参議院議員、串田誠一衆議院議員、海江田万里衆議院議員、柴山昌彦衆議院議員などの国会議員の先生方も駆けつけてくださいました。

更には、各国大使館(7カ国)の大使館員の方も大勢駆けつけてくださった中で開催されました。

集会では、初めに、単独親権違憲国家賠償訴訟の原告団代表である宗像氏から挨拶がありました。あいさつでは最近、実施されている法務省の法制審議会の議論について、今までと変わらない内向きな議論ばかりで諸外国で批判されハーグ条約でも禁止されてる子どもの連れ去り問題について何も議論されていないことが非常に問題であると指摘がありました。

また、今回の集会には、多くの外国の方々が出席してくだったことに対し深く感謝しておりました。改めて、日本の子どもの連れ去り問題は、日本のみならず海外からも関心が高いことを認識しました。

弁護団レポート

次に、原告弁護団である稲坂法律事務所の稲坂将成弁護士、古賀礼子弁護士から共同親権訴訟、単独親権違憲国家賠償訴訟についての説明がありました。

 今回で5回目を迎えた公判ですが、これまでは原告からは、求釈明で被告に対し婚姻制度の立法趣旨について説明を求めており、裁判官からも異例の被告に対する事務連絡による詳細な回答の指示が出ておりました。

9月に入って被告から第4準備書面が出され、その中で、婚姻中、共同親権の意義についての回答があり、婚姻中に共同親権制度が合理性を有する根拠として「父母双方が協力して子の養育に関し、慎重熟慮の上、子の養育に関する必要な判断を適宜適切に行うことを期待する」との回答が得られたそうです。

これまで「慎重熟慮」との言葉は学説でも無かった言葉で、この言葉を引き出したことに意義があるそうです。

原告団からは、被告の準備書面を受けて、再度、反論を提出します。

次回の公判は、11月25日午後2時より実施されます。

嘉田由紀子議員

次に参議院議員の嘉田由紀子議員からのあいさつがありました。

嘉田議員からは、2点ほどお話がありました。

一点目は、戦後、日本は、憲法改正がなされ両性の本質の平等から昭和22年から半年、日本国の基本方針として共同親権を採用したとのお話がありました。

二点目は、嘉田議員の国会報告(その3)の書籍の63ページにも記載がありますが、本年4月13日の法務委員会で日本の実親による子どもの連れ去りについて刑法224条の未成年者略取の範囲であるという国会答弁を上川法務大臣と法務省刑事局長が話をした。日本の実親による子どもの連れ去りは、監護権の侵害及び子どもの自由の侵害で224条の対象となるとの国会答弁があったとの報告がありました。

串田誠一議員

次に、串田議員からのご挨拶がありました。 

串田議員は、先日、当事者の祖母から子供に会えないと陳情があったとのお話をされておりました。

子どもの連れ去り問題は、子どもと父母だけではなく、祖父母・友達・みんなから断絶させるとてつもない人権侵害ですが、未だ日本の現状を変えられないことを悔やんでおりました。また、子どもの連れ去り問題に携わる議員が少なすぎるので、そのような現状を改善するためにも、今年は衆議院選挙もあるので来場者の方々に地元の国会議員への陳情して欲しいとのお話がありました。

弁護団からの報告及び国会議員のご挨拶が終わると本題である「 ドラ・トーザン氏(作家、ジャーナリスト)」によ「パパは仲間外れで大丈夫?」という演題でフランスからオンラインご講演を賜りました。

ドラ・トーザンさんのお話

ドラ・トーザン氏は、10年以上前から日本の「パパが仲間はずれで大丈夫」と訴えていたジャーナリストで2015年に執筆した「フランス人は「ママより女」」という書籍は、宗像氏が娘に読んで欲しい本として推薦している書籍です。

 ドラ・トーザン氏は、書籍についてフランスの女性は結婚をしないのに子どもの出生率が高いのは、なぜかを解説した書籍であり、この書籍を出版したことで、いろんなお父さんから父親としてのヒントがあって感謝されたと話をしておりました。

ドラ・トーザン氏は、講演で以下のことをお話しされておりました。

まず、日本の実親による子どもの拉致についてとても危惧されております。

日本では、サラリーマン家庭が多く、結婚してもあまり父親と娘や息子との関係を築けない家庭であること。サラリーマンの父親は、皆、忙しくて働き、夜は飲み会で、休日も仕事で出かけて家にいない。そのようなサラリーマン家庭の父親の役割は、仕事に行って稼いでくるだけ。そして、女性は皆、主婦で家にいて家事や育児に専念する。

そんな日本社会に「家族サービス」と言う言葉があることをいろんな日本人から聞いて驚いたということです。日本人の父親が休日に家族と一緒に居ることを「家族サービス」と表現する日本的文化こそ、親子を引き離しても何も問題視しない文化的暴力を感じることが出来ます。

また、ドラ・トーザン氏は、人間にとってお父さんの役割はとても重要なのに、日本では、離婚すると親子が断絶され、お父さんが死んだのと同じ状況になっているのに驚いたそうです。

日本の40代の女性と話をしたとき、彼女は、父親との思い出の話が全くなかったそうです。なぜ?と聞くと、理由は、離婚してからお父さんと会えなくなっていたということでした。これは、お父さん達もかわいそうですし、子ども達も可哀そうなのです。子どもは、誰でもお父さんもお母さんも必要であり、お父さんもお母さんも平等であるとおっしゃってくださいました。

また、フランスの社会も1970年代までは保守的で日本と同じような状況だったそうです。1970年代までは、離婚しても女性の仕事は少なく、婚外子もそれほど無かったそうです。

しかし、結婚しない人や事実婚や婚姻後の離婚などが増えたことで、子どもにも別居した親と会える面会交流が必要な状況になり、社会が変わったそうです。

なので、フランスは、この40~50年間の間で社会が変化し、その変化に応じて、離婚しても双方の親が子どもを養育するようになり、そのための法律も変ったそうです。

この点に関して、日本は、社会が変化しても法律が変わらないという問題があると指摘しています。市民活動から始まって、政治家と連絡とって、時代に合わせて法律を変えていかないといけないですが、日本は、法律を変化させるのが難しい国家だと言えるそうです。

離婚後の子どもとお父さんとお母さんの関係について、フランスでは、子どもがお母さんと一緒に住んでいても、パパとも一緒に住むことができる社会だそうです。父母の子に対する監護時間は半々であり、子どもは自分の部屋もそれぞれ2つある状態と言います。

日本も、もっと離婚をポジティブに考えて柔軟な家族関係を維持できれば、子どもだけではなく、両親も幸せになれると提言してくださいました。

しかし、日本は、個人の幸せを考える慣習が少なく、日本人は我慢する文化であり、コミュニケーションが不足しているので後になって子どもを連れ去るなどおかしな結果になるのが問題と指摘しております。

 その点を問題にした今回のヴァンサン氏のハンガーストライキの話にもふれておりました。

フランス人から見れば、日本の子どもの連れ去りシステムを維持している社会が恐ろしいとおっしゃいます。

どうして日本はそんなに人権問題が遅れているのか?

確かに男社会では間違えも色々あり、当然に女性を守らなければならないが、やっぱり、お父さんと子どもの関係が完全に引き離す日本文化の親子断絶システムはおかしいと嘆いてくれました。

ヴァンサン氏の子は、国籍が2つあるのに父親と引き離すことでもう一つの国籍のフランスに行ってもフランス人の親族・言語・文化等、何もかも全て父親と同様に引き離され、母国フランスのことが分からなくなるのです。

日本政府は、親子断絶の問題を速く解決して欲しいし、日本は、幸せの形や家族の形を一つの婚姻制度の型にはめずに、もっと楽に自由に余裕を持たせた家族の形態を認め合う社会が良いと提言してくださいました。

最後に、日本の離婚社会でのパパは仲間はずれで大丈夫→当然に答えは「NO」ですと。

子どもにとって、お父さんは、お母さんと同じぐらい大事です。

そして、子どもは、お父さんの愛を感じると強く育ちます。

結婚しても離婚しても子どもは父親を感じると強く育ちます。

日本では、離婚で親子の関係を完全に壊し、子どもを苦しめているのはなぜなのか、もっと日本人が日本人の手によって、子どものためにこれからの日本を変えて欲しい、変わって欲しいとお話されておりました。

ヴァンサン・フィショさんのお話

次にご講演されたのがヴァンサン・フィショ氏です。

日本人の妻に3年前に子どもが連れ去られたフランス人です。

令和3年7月に東京都の千駄ヶ谷駅で日本の実子誘拐を改善してほしいとハンガーストライキを強行されて、数多くの子どもの連れ去り被害者にその行動力で勇気を与えた方です。

ヴァンサン氏は、日本の子の連れ去りは子どもに対する児童虐待と断言しております。そして、以下のことをお話してくださいました。

子どもの連れ去りと闘う目的は、子どもためです。

ヴァンサン氏のハンガーストライキ中に、多くの母親が支援に来ました。

子どもを連れ去られても声を上げられなかった多くの母親が、千駄ヶ谷駅に駆けつけてくれてヴァンサン氏と共に日本の子どもの連れ去りは母親ですら子どもと会えなくなる異常な問題であると声を上げてくれました。

日本では、子どもの連れ去り問題をジェンダーの問題と考える人々もいますが、とんでもない誤りです。子どもの連れ去り問題は、ジェンダーの問題ではなく児童虐待の問題です。

 そして日本は、子ども拉致の国です。

政府のサイトに行くと17人の日本人が北朝鮮に拉致された記事が出ていますが、オーストラリアではフランス国籍とアメリカ国籍の500名以上の子ども達が日本に拉致されたと表示されているそうです。

日本の外務省の拉致のサイトには17名の日本人を拉致した北朝鮮は重大な犯罪を犯していると記載いていますが、オーストラリアのホームページの500名以上の日本に拉致した子どもの数と比べたらかがでしょうか、と語ってくださいました。

国際条約である児童権利条約についても、以下の通り語ってくれました。

児童権利条約では、どんな理由であろうと子どもの拉致は許されないことになっています。しかし、日本は15万人の子ども達を拉致しています。片親による拉致を日本政府は黙認しているのです。警察に行っても未成年者略取罪を取り上げてはくれません。それどころか自分の子どもに会いに行くことで逮捕しようとします。

そして、ヴァンサン氏は、言います。どんな組織犯罪もお金の流れを止めなければなりません。子どもの拉致ビジネスをやめさせるために弁護士の報酬を成功報酬ではなく、定額制の報酬にするべきです。面会交流をしないことに対する成功報酬も再考が必要。拉致を支援する弁護士の資格をはく奪するべきです。

裁判官も利害関係のある弁護士事務所に有利な判決を下すべきではない。

国際条約を尊重しない法律家は、法律家としての資格をはく奪するべきです。

DVシェルターも補助金営業の民間は廃止し、すべて公営に変えるべきです。

最後に、政府に対する怒りを表明してくださいました。

国会では、中国における人権侵害を話題にしていますが、国内で自国の子どもに対する実子誘拐・人権侵害がまかり通っていることに怒りを持っています、などと意見を表明してくださいました。

その後、海江田万里先生が来所されましてごあいさつしてくださいました。

海江田万里先生はヴァンサン氏へのねぎらいのお言葉を述べられ、日本の国内の子どもの連れ去り問題については、古い考えが未だはびこっており、新しい夫婦や家族の関係に移行できないことが問題とお話されました。また、この問題を解決するには、皆さんと協力し、日本の社会を変えていくことが重要とお話されておりました。

ティエリ・コンシニさんのお話

最後に、ティエリ・コンシニ氏からの講演がありました。

ティエリ・コンシニ氏は、フランスの国会議員の在外フランス人議会議員です。

フランスには、衆議院と参議院の他に在外議員というのがあり、在外議員の一人であります。

日本に在住し、国際離婚の問題で日本のハーグ条約加盟に対し、LBP(Left behindparent)とともに国際社会に訴えかけた方であり、また、日本の家族法制度の改革について日本政府に長年働きかけてきた方であります。

ご本人は、子どもの連れ去り当事者ではありませんが、10年前に在外議員に当選したときに、当時の日本人に子どもを拉致された当事者から日本人による子ども拉致の問題が訴えられ、それから日本人による子どもの拉致問題と闘い続けております。

現在、日本の裁判所と戦っている件数は1000件以上あり、EUの中では、日本人の子どもの拉致問題が一番、痛い問題であると言います。

今年の7月のヴァンサン氏のハンガーストライキに対してもマクロンと会えるように働きかけましたが、直接会うことはかないませんでした。最終的には、マクロン大統領と菅氏と共同宣言の中で子どもの問題について記述することになったとお話されておりました。

10年前にハーグ条約を日本に認めさせる時にも携わったそうで、ハーグ条約が成立後、子どもの連れ去りは国内法にも影響が出ると思ったのに全く機能せず落胆しているそうです。

2020年2月5日にフランス議会で日本への実子誘拐でフランス人の子どもがフランス人の親と引き離されることを非難する議決を採択し、経済問題に発展するかと思ったがそうはならなかったのは残念であるが、今後も子のような決議をとりたいとおっしゃってくださいました。

また、今後、日本では、こども庁ができることに言及し、こども庁の発足後は、子どもの最善の利益を本当に考えているのかフランスだけではなく、欧州議会は厳しくチェックしたい。子どもの問題については、欧州と日本の国会議員同士の話し合いの場所を作って欲しです。子どもの利益とは、離婚しても子どもが両方の親に自由に会うことであり、これを無視する日本と闘いたいとお話されておりました。

その他、日本が共同親権にならない理由として日本のフェミニスト団体である上野千鶴子氏の書籍を読んだそうです。その中で、共同親権の考え方が欧州と日本のフェミニストの考え方が大きく異なるので、欧州のフェミニスト団体と直接話し合い、欧州のフェミニストの口から日本のフェミニストの耳に共同親権のメリットデメリットを誤解の無いように伝えて欲しい。

日本のフェミニストが口にする不安とか色々と分かりますが、だからこそ、日本のフェミニストが思っている課題にたいしてフランスから貢献したいとおっしゃってくださいました。

最後に、ここには、多くのケースを見ると離婚しておらず共同親権状態なのに、親権者であるのに子どもと全然会えないというが、この現状について、現在の法律で改善できないのか疑問と言うことです。

裁判官の審判だけで別居親は親権者なのになぜ子どもと全く会えなくなるのか。

親権者が子どもに会えないのは、長年の日本の文化によるものなのか。

離婚前の別居中の親は子に本当に会えないのか。法律だけでなく、裁判官への教育で人権認識を改善する必要があるのではないか。

などとお話ししてくださいました。

以上の通り3名のフランスの方のご講演を頂きました。

その後の質問も活発な意見のやり取りを実施することができました。

世界から見るとやはり日本の家族法は、家制度を踏襲し、個人よりも家族法を守ることに特化しているように見えます。

もっと、家族のあり方が自由なように、日本の法律も離婚後の単独親権に縛られず、フランスの様に、より広く自由に家族の形を選択できる共同親権制度を導入するべきと考えます。(2021.9.28 K)