拝啓 棚村先生「きめこまやかな配慮」って何ですか?
早稲田大学法学学術院 棚村政行 様
共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会
いつもお世話になっています。去る4月26日、NHKのニュースで新型コロナウィルスの感染拡大の影響が、別居親子の面会交流にも及んでいることが、市民団体のデータとともに報道されました。
私どもの会にも、そういった相談が日常的に入ってきているので、事態の深刻さは伝わっています。先般、法務省はオンラインでの面会交流を奨励する内容の面会交流についての指針をホームページに掲示しました(【新型コロナウイルス感染症関係情報】面会交流について)。
この中では話し合いが困難になっている場合の相談窓口も紹介されていますが、そもそも会えなくなっている事態を前提にした相談に、具体的な解決策があるのか不明です。
そこで、先のNHKのニュースで、オンラインでの面会交流について紹介していた棚村様に、双方の親と子との関係維持のために、具体的にどのような方法を想定しているのか、発言をもとに質問させてください。
1 棚村さんは、「アメリカなど外国ではオンラインでの面会交流が20年ほど前から行われていて、日本はかなり遅れをとっている。面会交流は非常に重要なので、たとえ直接会えなくてもオンラインなどで会話できたほうがよい」とコメントで述べています。
この発言は、面会交流は非常に重要だが、履行されなくても仕方がないし、一般的にオンラインでの会話ができるのであれば代替してよいと解釈できます。そういう趣旨でよろしいでしょうか。
2 私どもの経験からすると、日本で同居親側が面会交流に消極的な場合や、面会交流が不履行になった場合、その時点で話し合いは成り立たなくなっており、電話でのやり取りもできないケースがほとんどです。日本の裁判所は子どもの写真送付を同居親に課すこともありますが、子どもの写真を見ても子育てはできませんし、自分の写真が親に送られても子どもの権利とは無関係です。
そう考えると、日本で別居親子間のオンラインの利用がアメリカと違って歴史が浅いのは、面会交流が子育ての時間であるという発想がなく、それを尊重する考えがないからだと思いますが、このような状況で日本が遅れを挽回できるには、どうすればよいと考えますか。
3 棚村さんは、「イギリスでは面会交流は非常に重要だとして、外出制限の例外に当たると明示している。」と指摘しています。日本でもイギリス同様、「親が同じ世帯に住んでいない場合、18歳未満の子供は両親の家の間を移動することができます」との指針を政府が示せば、現在関係を絶たれている親子の状況を大幅に改善できると考えますが、棚村さんは賛成していただけますか。しない場合は理由を教えてください。
4 棚村さんは「ほかにも外国ではオンラインでの交流や養育費などの問題についてもワンストップの相談窓口を設けるなど、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてきめこまやかな配慮があるとうかがえる。感染拡大がいつまで続くのかわからない中、日本の裁判所や弁護士会にも同様の取り組みが求められる」と話しています。
ところが日本では、東京家裁が面会交流に関する事件の期日を無期延期し、先の法務省の面会交流の指針の中でも相談窓口として紹介されている弁護士会も一時相談を停止していました。同様に紹介されていた養育費相談支援センターを運営する、公益社団法人家庭問題情報センターに関しては、私どもが実施したアンケートでは、「FPICが何らの代替手段も用意することなく3月中旬から5/6迄の閉鎖を通達してきたため、面会交流が出来なくなっています。それに対してせめて子供とのビデオ電話をお願いしますと要望を伝えたところ、『やるつもりはない。嫌なら他を当たれば良いのではないですか?』と足元をみたような対応をされました。」という回答が寄せられています。
棚村さんのおっしゃるきめ細かな対応は私どもも重要だと思いますが、こういった機関を利用できなかったり、国が紹介する相談窓口に電話していっそう子どもと引き離された親を傷つける対応をされるのではないかと、私どもは心配しています。
棚村さんは、こういった話し合いができない状況で、「オンラインでの交流」をどのように実現すべきと考えますか。また、国や支援団体によるどのような「きめこまやかな配慮」が望ましいと考えますか。
上記質問への答えは、5月22日までに上記連絡先まで、郵送またはファックスでご回答ください。回答は当会のホームページ、SNS等で紹介させていただくほか、各方面に当会が「きめこまやかな配慮」を求める際の参考にさせていただきます。