新型コロナウイルスの影響による家事事件期日取消についての要望書
令和2年4月27日
最高裁判所長官 大谷 直人 様
共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会
令和2年4月7日に東京家庭裁判所Webサイトのお知らせにて、4月8日から5月6日までの家事事件に関して、期日取消等が掲載されました。ただ、緊急事態宣言が更に延長される可能性もあり、また緊急事態宣言解除後の期日再開目処が示されておりません。
このことを受けて、当会では令和2年4月20日〜23日にかけて当会会員及び 当会関係者のうち家裁審理中の方を対象に緊急アンケートを実施し、94名の方から回答を得ることができました。この結果、69%もの方が期日取消または期日延期により次回期日が決まっておらず、万一5月以降も期日取消が行われた場合、更に影響が大きくなること。期日取消の影響を受けた方は、86%もの方が自分の子どもと会えない状態が継続し、更に58%という半数を超える方が子どもの安否・生死すら確認が取れない状態であること。本状況が継続した場合、83%もの方がご自身の審理から1ヶ月以内に審理を再開してもらわないと困る状況であること。といったように、家裁審理が当事者にとって緊急性が高く大変重要な位置づけであることが分かる結果となりました。加えて、フリーコメントにはコロナ影響を受けているにも関わらず、令和元年12月に改定・上昇となった養育費・婚姻費用の算定表を元にした、支払いの継続や期日再開後の審理判断に対する切実な不安が挙がっています。
既に報道では、コロナ影響による児童虐待の問題やシングル家庭への支援の問題が挙がっておりますが、今回の調査を受けると「シングル家庭における同居親による児童虐待に対して別居親は子どもを助けることが出来ない」、「収入が減った別居親が令和元年12月に改定・上昇となった養育費・婚姻費用により破綻した場合、同居のシングル家庭にも経済的破綻をもたらす」といったことが容易に分かります。
このように家裁期日の取消は、子ども、同居親、別居親それぞれに重大な影響をもたらします。子どもから見た場合の感染症のリスクは、親が二人いるのであれば別居・同居、親権の有無で違いはありません。緊急性の高い事件にについて期日が設けられることは裁判所も述べていますが、裁判所の都合で親子関係が損なわれている状況の早急な是正が求められます。コロナはいつになったら収束するのか未だ分からず、今後1年以上に渡り影響が及ぶことも報道されています。このように先が見えない非常事態だからこそ、家庭裁判所が親子関係を維持するために、主導的な役割を果たし、積極介入をしていただきたい。
具体的には当会として、次の事項を要望致します。
記
要望事項1 家事事件期日を早急に再開してください。
家事事件期日は、親子関係の維持、子育ての継続の観点から最重要な位置づけにあり、「不要不急」と呼ぶ余地はありません。アンケート結果5にもあるように、コンビニやスーパーにおいても飛沫感染を防ぐ手立てをとり、業務を継続しています。また、民間企業もリモートワークによって業務を継続しており、同様にアンケート結果5においてリモート裁判の要望の声も挙がっています。
家裁においても同様に、一刻も早く双方当事者に期日の調整を打診し、開催可能な裁判方法をあらゆる手段で検討し、家事事件期日を早急に再開してください。
要望事項2 緊急事態 及び 期日の取消等期間中においても、親子関係を維持するための面会交流を継続するべきとの方針を明確に示してください。
アンケート結果では期日取消の影響を受けた方は85%もの方が自分の子どもと会えない状態が継続し、更に56%という半数を超える方が子どもの安否・生死すら確認が取れない状態です。また、アンケート結果5にもあるようにFPICによる面会交流支援も同様にストップしていることがわかっています。
工夫すれば「3密」を避ける面会交流や、インターネットを利用した面会交流も可能です。また、子どもがどちらの親のもとにいても「3密」を避けていればコロナの感染リスクは変わりません。
このような非常事態にこそ親子関係を維持できるよう、双方の親との関係維持、別居親との面会交流は継続するべきとの方針を明確に示してください。また、調停期日の調整が困難なことにより調停の長期化が予想される場合には、調停期日の回数を減らすために、双方の親との頻繁かつ十分な時間の継続的な関係維持を内容とする暫定的な審判を短期間で示してください。
要望事項3 期日再開後はコロナ影響を考えた事件判断を行う指針を出してください。
婚姻費用・養育費に関しては、令和元年の12月に算定表の改定が行われ、従来よりも基準額がアップされました。しかしながらたったその2ヶ月後にコロナウイルスが広まり、コロナにより減収または職を失っているような方も居ます。アンケート結果5からも分かるように、コロナにより審理がストップしたことで、高額な婚姻費用を長期に渡って継続しなければいけない状況になっていること、また期日再開後も昨年度の年収 及び 改定後の算定表を基準に、婚姻費用・養育費が算定される恐れがあることを不安視する声が挙がっています。
また、コロナ影響により監護実績が積まれた結果、「継続性の原則」により親権および監護者指定判断に不利益が及ぶことを同様に不安視する声があります。
こういった事件においては、養育時間の分担割合と養育費の額をトレードオフする形で、双方の親が経済的に困窮することなく子どもの養育を分担し合い、生活維持ができる審判を暫定的に示してください。
期日再開後の養育権の判断においては、期日が開かれなかったことによる親子分離の期間においては、その分の養育時間を引き離された側の親に配分した事件判断を行うよう指針を出してください。
要望事項4 家庭問題情報センター(FPIC)の利用斡旋停止をしてください。
家庭裁判所から斡旋された家庭問題情報センターはコロナを受けて業務を引き受けず、利用者の親子関係が絶たれています。本来、家事事件の決定を守らせる責任は家庭裁判所にあり、業務を引き受けられない家庭問題情報センターを利用斡旋すること自体が問題です。このため、家庭問題情報センターの利用斡旋停止をしてください。万一、家庭裁判所が面会交流の支援員を必要と判断するのであれば、責任を負う家裁管轄職員が実施すべきものと考えます。
最後に、本問題を引き起こしている根本原因は、共同親権とは真逆にある婚姻外単独親権制度です。当会としては、引き続き婚姻内外問わず単独親権制度のもとにおいても双方の親の共同養育権の保障を家庭裁判所に求めます。
以上
(2020年5月1日に更新しています)