共同親権訴訟を進める会、民法改正法案への反対声明
2019年、私たちは民法の単独親権規定(単独親権民法)の改廃を拒む国の立法不作為の責任を問い、訴訟を提起しました。子どもと引き離された経験のある親からなる原告と、その賛同者からなる会です。
この度、法制審議会の要綱案を反映した民法改正法案(以下「改正法案」)が閣議決定され国会に上程されるにあたり、私たちは反対します。
改正法案が、現行単独親権民法と同じく、婚姻内外における共同・単独の差を維持し、親の子に対する養育権(親の権利)を侵害することに結果的になり、本訴訟で争点とする憲法14条の平等権と憲法13条の幸福追求権を侵害することを否定できないからです。
東京地方裁判所、東京高等裁判所は婚姻外の「差別的取り扱いは合理的」と言及し、婚姻外の父母の協力関係が一般に期待できないという理由で、私たちの訴えは棄却されています。
改正法案は、「離婚後の共同親権を導入」する形で、協議離婚において共同親権か単独親権かを父母が選ぶことが可能となっています。意見が食い違えば司法が判断することになります。親の子に対する養育権が司法で確立していない以上、協力関係が一般的に困難という司法の偏見を排除できません。片親の養育への関与は否定されるでしょう。
また、民法766条においては、協議離婚で取り決める内容について、「子の監護をすべき者(監護権者)」という項目が新たに付け加わり、その基準は「子の利益」以外はありません。この場合、仮に共同親権の取り決めがあったとしても、司法は父母一方を監護権者にできます。その権限が親権者と同等であり、かつ単独でその権限を行使することが可能なので、実質的には裁判官の主観や司法の先例で、やはり親の養育権が奪われます。
この規定は、現行法でも運用されている類推適用によって婚姻中にも適用可能ですから、もはや結婚時の共同親権状態においても、親の養育権が保障されえない事態を今回の法改正は追認することになります。この点において、「戦前の家父長制の復活」という懸念は必ずしも的外れではありません。「明治民法への回帰」ともとれる民法改正法案です。
離婚後においては「共同親権の導入」が自己目的化され、条文が一応は用意された一方で、未婚時、及び出生前の離婚時には、親権はこれまで通り母が原則とされ、例外的に父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることが可能になります。これは、子から見れば、婚姻外における差別的取り扱いが払しょくできない上に、さらに、離婚時には共同/単独で親権が指定されうるにもかかわらず、未婚時、及び出生前の離婚時には、父による養育責任は母が合意しなければ期待できないという、二重の意味での差別的取り扱いを合法化することにほかなりません。
私たちはかねてより、婚姻中のみ共同親権を適用した戦後民法改革が不徹底だったと指摘し、裁判でも主張してきました。親権者を父(多く戸主)の単独親権者としていた戦前の家制度に対し、男女平等と個人の尊重を規定した日本国憲法の規定を民法に素直に適用するならば、婚姻外に残った単独親権規定そのものを削除し、単独親権制度そのものを廃止することが本来の法改正の目指すべき方向だったはずだからです。
この度の改正法案は、司法が単独親権民法のもとで積み上げた、日本国憲法を蔑ろにした違法な運用を合法化することにほかならず、反対します。(2024.3.8共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会)