開かれた家族法改正議論についての要望書

2022年8月16日

法務大臣 葉梨康弘 様
法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様
法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会

私たちは、主に離婚を契機に子どもと引き離された経験のある親たちからなる団体です。子どもを手元で育てつつ、別れた元パートナーが子どもに会いに来ないことで私たちの活動に参加してくれている仲間もいます。

私たちは現在、現行の単独親権制度が憲法上の規定に抵触することから、その改廃を求めて、立法不作為の違法性を訴える国家賠償請求訴訟を国に対して提起しています。そのため、私たちは法律的な争点以外でも、具体的に国に要請がある場合についても、担当部局である民事局参事官室に面談を拒否されるという、請願法違反の差別的な対応を受けています。これらは、正統な裁判手続を取ったことで不利益を受けるという点で、司法手続の信頼性を著しく損なう職権乱用行為です。

昨年から、法務省法制審議会家族法制部会は、親権法の改革を議論していますが、先日、8月中に中間試案を公表した上でパブリックコメントを求める、というスケジュールが報道されました。私たちは、現行法制度の違憲性を司法で国と争っている立場から、私たちが提起した法的な論点が、法制審議会の中でどのように取り上げられるのかを注視していました。

しかしながら、今までに公表されてきた審議会の議事録において、現在国が訴えられている親権関連の訴訟の存在やその論点について、一切議論されたこともなく、事務局から報告されたこともありません。驚くべきことです。

仮に、訴訟で国が敗訴をしたならば、法制審議会が用意した改正案が、違憲の立法案になる可能性があります。そうでないとしても、裁判で被告国側がどのような指摘を受け、法務省が具体的にどのような対応をしているかは、委員が改革案を検討する段階で知るべき情報です。私たちは、法務省の事務局があえてこの問題に触れないことで、自らの省益や司法当局の権益を守ろうとしているのではないか、という疑念を抱かざるを得ません。

法制審議会の委員24人のうち、判官交流のもと、実に4人が裁判官出身(現役・元)であることは、三権分立の原則を蔑ろにするものです。法制審議会は法務大臣の諮問機関であるはずなのに、委員に担当部局の法務官僚も加わり、諮問する側が諮問を受けて審議をする、というお手盛りぶりです。これでは、司法の判決など、自分たちでいかようにもできるので、国が訴えられている事実など取るに足りないこと、と言っているようなものです。

この度の法制審議会での議論の中で、事務局が用意した改革法案は、共同親権を求める世論や海外からの批判を配慮しながら、「共同親権」という用語のみを採用しつつ、監護者指定については従来どおり残すなど、現状の裁判所実務をいかに維持するかに腐心しているというのが一目瞭然です。その際、法務・司法当局が受けた指摘に対しては一切話題にせず、沈黙を貫いていることこそが、私たち主権者を愚弄している証拠です。

私たちは今回の親権法の改革が、離婚に陥った当事者のみならず、日本の家族のあり方についても大きく影響を与えると考えており、その議論において、審議する委員にすらも必要な情報を提供しない法務当局の恣意的な態度と怠慢を放置すsることはできません。このままパブリックコメントをしたところで、司法・法務当局の説明責任が尽くされないことは明らかです。

そこで以下の各点を申し入れます。

1 家族法改正の中間試案を公表するにあたり、現在進行中の関連国家賠請求訴訟に関して、どのような憲法上の争点があり、法務当局がどのように対処しているのか、同時に公表してください。

2 家族法改正の中間試案を公表するにあたり、パブリックコメントを求めて良しとするのではなく、委員が各都道府県、大学等の各教育機関や関係団体に出向いて中間試案について説明する機会を設けてください。その際、各関連国家賠償請求訴訟の、代表者の意見表明の場を設け、試案の賛否の意見交換を促しつつ、広く開かれた議論が行われるようにしてください。

3 後半の議論においては、三権分立の観点から、裁判官出身及び法務当局の委員は解任してください。

以上