第7回手づくり民法・法制審議会、議事録と勧告

第7回 手づくり法制審議会議事録(4月分)

日時:2022年4月9日(土) 15:00~17:00

場所:東京都文京区全労会館 3階会議室

司会 宗像充 

ゲスト 弁護士 古賀礼子

パネリスト 加茂大治/佐藤創

配信 羽田ゆきまさ

書記 大山直美

内容:前半「やりなおし!法制審」ライブ配信15:15~16:00

後半 参加者と議論、勧告策定

議題:法制審議会家族法制部会 第9・10回会議の議事録について

古賀氏より、第9・10回議事録から議論の内容についての要点と、特に注意すべきポイントについて報告を頂き、その後、パネリストらとの議論を行った。

古賀氏の見解

民法の部分的な改正がされてきている中で、平成8年時点で検討済となっている財産分与の「二分の一ルール」について、明文化に至っていなかったので、国の法制審において財産分与の積み残しテーマとして、今回とりあげているように考えられる。

実務上「浪費した方が勝ち、働いたら負け」になっている運用の問題意識も乏しく、あるべき夫婦像の土台もなく、現行の実務を正す議論が見られない。

夫婦の意見が一致しない場合の規定が「ない」ことに問題があって、この問題意識は民法試案(877条 柳川、長野案)には存在したが、結局施行することはなかったことがわかっており、まさに、立法不作為の問題である。

共同親権制を用意するために何が欠落しているか、研究者の中では共有されている点が、議論の基礎になっているのか疑わしい。

佐藤氏の見解

紛争の協議をする場合、例えば、キリスト教では、まず当人同士、友人(第三者)、教会、裁判の段階を経る、というのが聖書に書かれてあるのだが、協議の段階を設けると良いのではないだろうか。また、同じパワーバランスが同じである必要がある。

専業主婦が現れたのは、高度成長期であるわけで、効率を求めて男女で分業した経緯がある。それなのに、長時間働いた男性が子どもの養育が女性より少ないという指摘をされたり、子どもの養育から排除される法律は不当である。

宗像氏の見解

非養育型養子は、家制度の名残である。

単独親権は「家」に囲い込む制度であり、非親権者である生物学上の親が邪魔な存在として扱われているが、国の法制審の議論は、政策論に終始し、人権感覚が皆無のため、「人権侵害」にあたるという観点で話されていないことは問題である。

日本における男女関係というのは、男が決めて、裏で女が男を転がす発想が根強く、女が責任をとらないスタイルが多く見られる。これは、男女が対等とは言えない。

婚姻中の男女が、力関係の不均衡さによってものを決めることについて、国の法制審は問題と思っていないふしがある。そのような問題がある時、昔は仲人が仲裁していたが、現在はカウンセラーがその役目を担っているのが実情だ。

結婚を国家的ステータスだと考えるならば、国が婚姻を調整する、存続をさせるようにする手だて(=制度)があった方がいいだろう。

夫婦の力関係で紛争を決着させて構わない、という考え方をすると、単独親権の保持になる。

問答無用で、同居親が子どもについて物事を決めていく状況は、正に、「DVによる解決」の争議に当たり、大変不当な解決方法である。

例えば、子どもの学校の契約の安定性は、家父長制がやりやすいが、男女平等で考えると、それは到底受け入れられるものではない。

戦後民法の父、我妻栄氏は、民法作成時に、妻である女性が、夫の男性に意義を唱える状況を考慮しなかった。これは、家長が決めることに反対する女性の存在を想定していなかったからであることが、既に文献から明らかである。しかし、現代は女性が子を連れて逃げることに代表されるように、実力行使による「結果」を追認する時代になっており、紛争の解決策が、紛争者の一方の排除によって調整するという現状のやり方には問題がある。

財産分与で、海外は自立支援金を出す制度があるが、日本は、慰謝料と養育費がそこを賄っていると捉えられて、国の法制審では、現状を変えるような議論が深まらなかった。

女性がキャリアを取り戻すためのお金を与えるという考え方を基に、自立支援金を配偶者の男性や、あるいは国が出す考え方があるが、平等論から言って、子どものための時間を男女で分け合うという理屈も成り立つが、国の法制審は「養育時間の平等な分配」ということは一切言ってきていない。

加茂氏の見解

婚姻中の共同親権は制度的担保がないという指摘について思うのは、婚姻中の共同親権の行使に、国家が介入する制度立てをして欲しくないと思う。婚姻中に夫婦の意見が一致しない場合、問題の多くは、離婚を選択するまでもなく、帰結主義(結果主義)で解決していくことが多いだろう。意見がどうしても割れるのであれば離婚は致し方ないとも言える。

協議の方法として、いきなり裁判所を設定するのではなく、段階的に協議のやり方を示すことには同意する。

自立支援金(就労支援金)と慰謝料は両方採用して良いのではないか。

次回パネリストは引き続き古賀礼子氏。

テーマは公開された最新の法制審資料(資料13を含む)をもとに議論を行う。

次回は5月7日(土)15:10から17:0017:00まで @全労会館

以上

【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 7】

2022年4月24日

法務大臣 古川 禎久 様

法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様

法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

          

任意団体 手づくり民法・法制審議会

私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メンバーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行して、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。

2022年4月9日に当団体で、法務省法制審議会第9,10回の議論をもとに、第7回「やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(共同親権運動チャンネル・羽田ゆきまさ報道局)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。

「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」(2021年8月~2022年4月分)

第1回 8月

第2回 9月

第3回 10月

第4回 11月

第5回 12月

・1、2月の配信はなし

第6回 3月

第7回 4月

https://www.facebook.com/events/358449866215845?acontext=%7B%22event_action_history%22%3A[%7B%22mechanism%22%3A%22your_upcoming_events_unit%22%2C%22surface%22%3A%22bookmark%22%7D]%2C%22ref_notif_type%22%3Anull%7D

法務大臣の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。

そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告いたします。

【勧告1】婚姻内外問わず、親同士の意見の対立を調整する規定が現行民法にはないことを、民法・家族法に詳しい法学者部会長大村敦志様をはじめ、委員の水野紀子様、棚村政行様などは良くご存じのことを私たちは存じております。親権法改正要綱案がこれまでに複数の学者やグループから繰り返し発表されていますし、

何よりも、部会長の大村敦志様はご自身の編著作『比較家族法研究』〔商事法務2012〕において、「欧米の親権法は父の単独親権から父母への共同親権へというように、男女平等の理念に従って父母の平等化を実現すべく発展してきた。離婚後においても共同親権を認めることは、この延長上に位置する面がある」と明言されておりますし、『民法読解 親族編』〔有斐閣2015〕P.98においては、「今日において、単独監護・単独親権を積極的に擁護する理由は乏しい。父母の権利・子どもの権利の双方の観点から、立法論としては、共同監護・共同親権を原則とすべきであろう」 と書いておられるのに、真正面からこの問題を取り上げて、親権についての議論を避けていることはとても容認できません。直ちに議論を開始することを求めます。

【勧告2】財産分与において、実務で「二分の一ルール」が定着していることに異論がないことは、委員の間でも確認されました。金銭的に男女平等を採用するということは、養育時間を男女平等に分け合うことも採用されるべきなのに、裁判所において一方の親に「監護者を指定する」という事実は、婚姻中においてワンオペ育児を推進していることであって、イクメンが増える世の中を、否定していることにお気づきでしょうか?養育時間の平等について、直ちに議論をするべきです。

以上