第8回 手づくり法制審議会議事録(3月分)・勧告6

第8回 手づくり法制審議会議事録(3月分)

日時:2022年3月13日(土) 15:00~17:00

場所:東京都文京区全労会館 3階会議室

パネリスト:

司会 宗像充

加茂大治/佐藤創

配信 佐藤創/羽田ゆきまさ

書記 大山直美

内容:前半「やりなおし!法制審」ライブ配信15:10~16:00

後半 参加者と議論、勧告策定

議題:法制審議会家族法制部会 第9回会議の議事録公開が遅れたため、現在までの審議会全体の進行・内容について議論する 

佐藤氏の見解

 「生物学上の親」としての法的地位を、子の利益、未成年子の養育などのファクターを考慮したうえで決める必要がある。

この度、法制審で初めて使われた表現として、「現に監護する親」という概念があるけれども、それを想定した身分ができるだけで、仮にその概念に則ったルールを決めても、現在と実態は変わらない。

国の法制審の議論が単独親権制度の枠から外れないということは、親のランク付けをすることにしかならない。これは、全く子の利益にならないという危うさがある。つまり、実質は現在の状況と全く変わらないことを意味する。

「生物学上の親」の平等性から、両者の法的地位をきちんと確保して欲しい。

宗像氏の見解

これまで、この「手づくり法制審」で何度も指摘してきたが、子どもは、「誰が」育てるべきか、考える必要がある。

「いい親」を国が決められると思っている節があるが、これは「国家のエリート」たる自分たちこそが、国家に対する忠実度を基準に「いい親」を決めていく権利があるとする選民思想にあたる。

共同親権を求める国賠で「民法813条 3項 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う」を違憲と主張している、この条文中の「父母の婚姻中は」を抜けば、父母を第1義的に考えるべきであることになる。憲法14条「法の下に平等」を根拠に親も平等であることを主張しているが、婚姻内外での親の身分の違いが差別的である。

本日欠席しているが、この手づくり法制審メンバーの松村氏は、面会交流中の親の扱いなど、平等論なしに、離婚後の親権のあり方を議論をしても、差別的な結果しか出ないと指摘している。

この論法で進めると、意欲のない親は、監護しなくてよい、養育費のみ払えばよいという結論になるが、それは良くないだろう。

国の法制審は、虐待する夫やDVする夫は、不適切な親として排除するという前提になっている。

さらに、養子縁組に出す権利についての話がされていない。単独親権下の、非親権者の親に承諾をとること、代諾養子を辞めるのか、権限を与えるのか、といったことに言及する必要がある。

現行の婚姻制度を維持するために、協議離婚の温存を前提として議論をしている。

委員は、「連れ去り、拉致、単独親権」について触れないようにしているように見える。事務局の出す資料に疑義を挟みにくいのかもしれない。

生物学上の親に「養育の責任」がある前提を無視しているため、議論が空転しているというか、内容の伴わないものになりがちである。

制度である「家庭」は、つながりとしての「家族」を担保するための手段に過ぎない。

誰が子どもを養育するのか、という問題は、国の法制審というよりも、世論と討論すべきなのかもしれない。

面会交流は、養育時間と考えるべきだ。

養育放棄、単独親権者への養育のおしつけという問題についての議論が全くされていない。

子の養育の意欲を、減点式で判断するのは間違っている。

加茂氏の見解

親権者に第1親権者、第2親権者といった序列を作りかねない議論がなされており、国家が親権者の序列作りに介入するのは、国家と資本に対しての忠実度を測ろうという試みに感じられ、絶対に認めてはならないことである。ただし私見として、親権者間で優先順位を協議しておくことは、緊急避難的な事態に対応するためにも有益だと考えている。

仮に法律を変えたところで、今度はDV被害者が逃げにくくなるなど、被害を受ける人が発生するという点で現状があまり変わるとは思えず、現状をより良く変化させるために担保すべき制度設計が全く語られていない。また、行政の縦割り権限の中で、既得権益をなるべく移譲をしないようにしているのではないかと悪意を持って解釈したくなるような議論になってしまっている。制度設計をし直すことで、予算措置が必要になるようなことを主張しない委員を集めたのだろうか。

社会学的な視点に立つ赤石委員・落合委員などは、つながりとしての「家族」、その他の委員にとっては法的制度ないしは国家の最小単位としての「家庭」と、意味内容や記号内容が違っているのに、この審議会で最も重要なファクターである「家族・家庭」を厳密に定義づけもせずに混同して使用して議論をしていることで、問題の本質にフォーカスできていないことに委員は気付くべきであろう。

監護のあり方、親権者決定などに、そもそも国が介入するのは越権であり、家族法と共に、国家自体もそろそろ解体の時期が来ているのではないか。

余談だが、「子供の最善の利益」を指数化したり、その利益に対する貢献度を両親間で係数化する議論がなされているが、数字の取り方ひとつとっても、調査者の立場による恣意が入り込む余地が多々あり、全くナンセンスである。しかし、例えば、単独親の家庭に育った子供と両親が揃っている子供の人生に対する満足度比較等、「子供の発達度」という視点からのコホート研究はかなりなされており、調査に恣意の入り込む余地がより少ない。こういった議論に用いるのであれば、その方が量的にも比較しやすいし、比較的に信頼性が高く使い勝手のいい研究と言える。

次回パネリストは交渉中。

テーマは公開された最新の法制審資料と、過去の議事録をもとに議論を行う。

次回は4月9日(土)15:10から17:00まで @全労会館

以上

【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 6】

2022年3月26日

法務大臣 古川 禎久 様

法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様

法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

          

任意団体 手づくり民法・法制審議会

長野県下伊那郡大鹿村大河原2208

(担当・宗像 充)

私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メンバーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行して、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。

2022年3月12日に当団体で、法務省法制審議会第9回の議論をもとに、第7回「やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(共同親権運動チャンネル・羽田ゆきまさ報道局)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。

「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」(2021年12月~2022年2月分)

2月

3月

 法務大臣の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。

そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告いたします。

【勧告1】

単独親権制下において「現に監護する親」という表現によって、「生物学上のもう一方の親」を養育から排除することは、憲法の男女平等に反しています。親を、「現に監護する親」と「非監護親」に分類することは、断じて認めることができません。

婚姻の内外に関わらず、親としての地位の平等性を図らなければ、この法制審の議論が無意味なものになってしまいます。「現に監護する親」を判断することを、家庭裁判所の裁判官の主観に任せることは法治国家として決してやってはいけないことです。

【勧告2】

「面会交流」はそもそも、「生物学上の親」が親としての質(養育を実行している感覚)を感じられる人的交流でなくてはいけません。そして、これは非監護親による、単なる面会ではなく、養育時間であると位置づける必要があります。

私たちが求める「共同親権」は、親の男女平等を基本に、養育時間を親同士で分けようとするものです。

財産分与で「二分の一ルール」が定着しているように、養育時間についても双方の親が平等に責任を持つというようなルール作りが必要です。

【勧告3】

子どもから見て、親の身分を「監護親」、「非監護親」と分けることは、親に身分による序列を与える差別行為です。これでは、子どもの福祉に資するとはとても言えません。単独親権ありきの議論をしているのでは、法務大臣が法制審に諮問をした意味がありません。「共同親権」成立後に、このような基準を設けることは運用において必要となる可能性は認めますが、単独親権下で親の身分を序列化させることは、憲法14条 男女平等に反することを自覚してください。

【勧告4】

世の中には、虐待にはあたらないが、養育を放棄する親というものも存在します。単独親権制度下では、「親権者」に「非親権者」が子どもの養育を押し付けているわけですが、このような「非親権者」には、どのように適切な養育を促すか、という問題があります。しかし議事録を読む限り、全く意識されていないポイントです。ぜひ取り上げて議論を深めてください。 

この勧告書は請願法に基づき、委員会審議時に各委員に配布回覧してください。

以上