第4回 手づくり民法法制審議会(11月分)レポート

日時:2021年11月13日(土)15:00~17:00

場所:東京都文京区全労会館 3階会議室

パネリスト:

[ゲスト]濱野健さん

司会 宗像充

松村直人/加茂大治

配信 羽田ゆきまさ

書記 大山直美

内容:前半「やりなおし!法制審」ライブ配信15:10~16:00

後半 参加者と議論、勧告策定

議題:既に公開された、法制審議会家族法制部会第5回会議 議事録をもとに、市民レベルで検証する。

・松村氏による論点の提示と見解

1)法制審議会とは法務省が設置する、法律の立法や答申の役割が与えられた重要な会議である。

2)11月13日現在、第8回まで開催されたが、公開された議事録は第6回までなので、当団体として今回扱うのはここまで。

3)相変わらず社会として「家族をどのようにデザインするか」の議論をしないので法制審の答申は作れない。

4)原則や、前提抜きに議論がされていて、落合委員、小粥委員が議論における重要なことを指摘しているが改善されない。

5)単独親権制では、非親権者と子どもは親子ではないとされてしまうなど、法制審の枠組みで議論すべきと同時に、社会保障などを含め、社会デザインの領域でのトピックでもあるので、この際、政治の分野でも迅速な意思決定が求められる。

6)検討のスピードがあまりに遅すぎる。

濱野氏の見解

社会学の視点から法に盛り込むべきことを議論されておらず、委員が意見してもかわされてしまっていることが問題であると思う。法律によって家族を規定するのではなく、支援するための法律が必要であると思う。

家族のレイヤーは①民法(法制審で議論中) ②家族の個別事情 ③参加する人が権利主体である の3つあり、これらをすり合わせる必要がある。

②③の支援を法律でどこまで踏み込めるかということにかかっている。 

法律はすべての人を支えられるのではないことに留意する必要がある。

法律は、本来、多様性を排除するものではないので、必ず対策はあるはずである。

男性の育児時間は増えているが、家事時間はほとんど変化していない。つまり、女性だけではなく男性にも家庭内の性別役割分業が依然として根強く存在していながら、子育てについて男性も参加したいという意識がある。そのギャップが夫婦間の別居後また離婚後の共同養育の可能性を阻害しているのではないか。ただし、性別役割分業については夫婦双方が解消されるべき問題であるので、これについては男性も女性も、共にその解消に向かうべきである。

ライフステージの変化に応じて、親子のメンテナンスを裁判所ができるのか?法律はどんなケアができるのか?を引き続き考えていく必要がある。

宗像氏の見解

 親権問題が、人権問題に直結すると認識されていないために、法改正の必要がまるで認識されていない。国、法、立法事実の問題点を問題提起していく必要がある。裁判官の細矢氏の答弁からもわかるように、家族の定義を従前のものから変更ないというのが、国の法制審のメインストリームである。赤石氏が離婚後の子の養育の議論とはどのような社会をを目指すのかという疑問を投げ掛けて、国の法制審についての矛盾を指摘した。

議題である離婚後の養育問題を、役人は、離婚後の親権に議論を閉じたいと思っている。しかし、そのためには、婚姻中の家族のあり方から問わなければならないので、どのように問題に手当てをするべきか、わからなくなっているのが実情であろう。

国の立法不作為(違法状態)について起算するには、民法立法時に遡る必要がある。戦後、GHQからは、何度もだめだしされて一度は共同親権になったことが明らかになっている。(経緯の詳細は割愛。)やり残した民法改正を直すのが、この現代の民法学者の仕事である。

連れ去り・引き離し被害者は家裁に支援を求めて行くのだが、裁判官は事情を汲まない決定を出しており、個別の対応をしないのが実情。

調査官を裁判所の外に設置するべきであることも、自分達は長らく主張してきている。家族法学者の棚村氏を始め、委員は離婚の裁判所手続きの現場を知らないので、法的手当てが必要な場所を認識していない。

家裁の運用にも問題がある。

当事者以外にもこの親権問題を喚起する必要がある。

別居親に立った法律がないのは大問題である。

現代までつづく家父長制に、女性の自立が適応できていないため、一般に内輪揉めと認識されてしまいがちであるが、これは社会の問題と捉えるべきである。家父長制の悪影響である、単独親権制と、結婚による夫婦同姓については一緒にメスを入れるべき。

加茂氏の見解

法律家とそれ以外の学者・メンバーによって、家族を指しているものに差異があり、その齟齬が今回の議事録で明らかになったと感じた。

国の法制審をコミュニケーションの観点から分析すると、3つのグループがあることがわかる。議論について①予定通りの結論に着地させる ②議論の構造に反対する ③議論のゆくえを先読みして撹乱する。

この法制審に招集されているメンバーは、あらかじめ各々の考える社会デザインを背景に持っていることを前提としての招集なのだから、ここで社会デザインの議論をするのは時間の無駄である。それよりも、そのデザインに基づいた具体的な法制定について議論すべきである。

オンライン配信後

参加者から:共同親権に法改正される見込みはどの程度か?という質問や、別居親差別は、当事者ですらなかなか意識されていない、裁判所は個別の対応をしているというが、運用を改善する余地がある、という指摘があった。

次回はパネリストとして古賀礼子氏が参加予定。

テーマは裁判所の運用について。

次回は12月11日(土)15:10から17:00まで @文京区全労会館

以上

【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 4】

2021年11月22日

法務大臣 古川 禎久 様

法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様

法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様

          任意団体 手づくり民法・法制審議会(担当・宗像 充)

私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メンバーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行して、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。

2021年11月13日に当団体で、法務省法制審議会第6回の議論をもとに、第3回「やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(共同親権運動チャンネル)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。

「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」

法務大臣による国の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。

 そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告、及び質問いたします。

【勧告1】

法制審議会は、法改正の可否、もしくは新たな立法のために議論する場と当団体は認識していますが、これまでの議論を議事録で拝見する限り、おおよそ手続き論に終始し、本質的な問題解決のために具体的な議論がなされた形跡が僅かです。出席者の皆さんには、 今この瞬間にも、法的な保護から疎外され苦しむ被害者が生まれていることを深く認識し、早急に具体的な議論を進行するように再度求めます。

【勧告2】

「親権と看監護―民法第766条、第818条及び819条の成立」(許末恵著:青山学院大学法学叢書・2016年・日本評論社)において、1947年に約半年間だけ施行された暫定民法では共同親権が導入されていたことが指摘されています。これは、天皇制の護持および忠実な兵士育成を主目的とする家父長制から、女性を解放し社会への進出を促す、両性の平等を担保する先進的な法律でした。それが、1948年に発布された現行民法では、単独親権制に逆行しています。この事実は、現行民法が、戦争を支えた戦前の体制を反省せず、家父長制温存を払しょくできなかったことを物語っています。この重要な事実の経緯を、大村部会長などの民法専門家がまとめ、次回審議会期日までに、各委員に周知を図るよう求めます。

この勧告書は請願法に基づき、委員会審議時に各委員に配布回覧してください。また質問への答えは、次回の法制審議会で議論し、回答を取りまとめてください。議事録で確認いたします。                              

  以上