第3回 手づくり民法・法制審議会議事録
第3回 手づくり法制審議会議事録(10月分)
日時:2021年10月9日(土)15:00~17:00
場所:東京都文京区全労会館 3階会議室
パネリスト:
[ゲスト]高橋孝和さん
司会 宗像充
松村直人(webでの参加)/加茂大治
配信 羽田ゆきまさ
書記 大山直美
内容:前半「やりなおし!法制審」ライブ配信15:10~16:00
後半 参加者と議論、勧告策定
議題:既に公開された、法制審議会家族法制部会第5回会議 議事録をもとに、市民レベルで検証する。
・松村氏による論点の提示と見解
1)法制審議会とは法務省が設置する、法律の立法や答申の役割が与えられた重要な会議である。
2)10月9日現在、第7回まで開催されたが、公開された議事録は第5回までなので、当団体として今回扱うのはここまで。
3)関係官の人事異動があった。
4)第五回目であるのに、議論が全く前進しておらず、委員がどうやって議論を終着点に持っていけばよいのか、困っている状況であり、業を煮やした小粥委員が事務局に要望をだした。内容は以下の2点。
①議論の進め方を整理するため、親権・監護権について概念を事務局で整理して出すこと、
②民事法制とそれ以外で扱う問題を明らかにした検討状況または進捗状況を資料を出すこと(議事録 P.7)。
5)武田委員が、裁判手続きの負担軽減や利便性から民間ADRを提案する口火をを切ったために、その後賛同者が何人も続く状況になったが、このまま法整備をしない状態では、ADRを利用しても、起きている問題の解決にならないことは明白である。
6)社会として「家族をどのようにデザインするか」の議論なしに法制審の答申は作れないだろう。
7)とにかく、進行が遅すぎるし、事務局の意向ありきで運営されていることを疑っている。
8)毎回提出されている資料は、有用なものも多いので、今後も我々としても利用可能だろう。
9)憲法と条約の関係、子どもは誰が育てるのか?という稚拙な議論になっている。
10)現在、事務局内の担当者と担当内容、事務局が作成したという叩き台について開示請求をかけている。
高橋氏の見解
1)議論が各論・手続き論のみになっている。養育費と面会交流がトピックになって議論が始められているが、まず、親権制度の議論がないのは、土台なしに家が建たないのと同じ理屈で、議論のやり方に大いに問題がある。
2)親権も養育権も、基本的人権である。戦後、日本社会の悪しき因習と法制の源として家制度を解体したというのに、未だ親権は基本的人権ではない、というこの状況を是正する必要がある。
3)人権は、「国家権力の乱用をいかに押さえるか」という現行憲法(立憲主義)の考え方の柱である。国際人権法上、子どもの権利条約は重要な位置にあり(ちなみに主要国ではアメリカのみが批准していないが)、条約に批准していながら、(子どもと親のの)人権がない不当に制限されている状態が続いているということが日本国内で理解されていない。法は、憲法、条約、国内法の順に優先されるという、ごく基本的な原則が全く押さえられていないことは大問題である。
4)また、貧困はひとり親に限った問題ではなく、親が二人でも、貧困状態がある。貧困世帯の、ひとり親の割合は2割であるのに、国や自治体は、この2割だけを支援することばかり考えているのは、差別であるし、メディアもその問題に全く気づかずに報道するために、世に問題が認知されないところにも問題がある。
宗像氏の見解
1)この法制審は、親権問題、共同親権にはこだわらないで議論する場として開始されてしまった経緯がある。
2)日本も、海外も、母親が9割以上親権を持つ、または、同居しているが、ドイツの面会交流時間は時間換算すると、年間100日分、日本は年間1日分しかなく、40パーセントは反故にされているという、面会交流時間の量的格差について認識がないまま、DV問題を持ち出していることが問題である。イギリスやオーストラリアで共同親権制度に対する見直しがなされているというが、あくまで運用上の見直しであり、制度そのものの見直しではない。現にオーストラリア政府は、日本の単独親権制度から生じる諸問題(特に不当な子の連れ去り)について、厳重な抗議を行っている。
3)官僚主導の、思惑通りの審議進行になってしまっている。
4)恐らく委員の半数はフェミニストであろうに、現代のフェミニズムは梶村太一氏の価値観(女性が親権をとる現状を変えない、既得権益の確保)をひきついでおり、まるで儒学をベースにしたようなフェミニズムであるのが良くない。5)女が90パーセント以上親権をとり、男は年間1日分しか面会交流できないのは全く男女平等でないことを指摘すべきである。
6)婚外子、一人親、二人親差別を考える必要がある。婚外子にとっても共同親権にすることはメリットがある。
7)金(養育費)は欲しいが、別居親に会わせたくない、という気持ちを代弁する法律を作ろうとしているように見える。
8)現在、単独親権下であってもDVが増加中であり、単独親権はDVの抑止にはならない。
9)山口亮子氏のアメリカの親権についての書籍が参考になる。
加茂氏の見解
1)なぜ法制審が機能しないのか?どのような条件が揃えば機能するようになるかを、考える必要がある。
2)差別に対しては大変敏感な世の中になったのに、宗像氏の言う儒教的フェミニズム、貧困・ひとり親差別については全く差別という感受性がない。
3)現行法でどのような問題が生じていて、それを法改正でどのように是正していくのかという、現実に即した思考実験が必要とされる場であるのに、未だに問題点の抽出と整理にも至っていないのは、バカバカしいを通り越して悲劇的だ。
オンライン配信後
参加者から:「共同親権にしたら男性はDVをするから単独親権を続行する」
という、予断に基づいた性差別をされている。「男性」を「黒人」とか、「女性」、と置き換えると、差別とすぐわかるのに、何となく気づきにくい問題であることを奇貨として差別が横行していると感じる、など。
次回もパネリストとして、濱野健さん(北九州大学)が参加予定
次回は11月13日(土)15:10から17:00まで @文京区全労会館
以上
【法務省法制審議会・家族法制部会への勧告 3】
2021年10月14日
法務大臣 古川 禎久 様
法務省法制審議会 家族法制部会 部会長 大村敦志 様
法務省法制審議会 家族法制部会 委員の皆様
任意団体 手づくり民法・法制審議会(担当・宗像 充)
私たちは、離婚と子どもに関する法的問題について議論をしている団体です。常任メンバーには、子どもと不当に引き離された経験を持つ親が多いですが、法制審議会と平行して、市民の視点からの独自の議論を継続的に行っています。
2021年10月9日に当団体で、法務省法制審議会第5回の議論をもとに、第3回「やり直し法制審」の議論をインターネット配信しました(羽田ゆきまさ報道局)のでどうかご覧ください(「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のサイトで議事録も公開しています)。
「法制審議会家族法制部会・やり直し法制審」
https://www.youtube.com/watch?v=On0knp-4jE8&t=11s
国の法務大臣の民法法制審議会の諮問事項は「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」ということです。
そこで、当団体での議論を踏まえ、法制審議会での議論の推移について、以下の点を指摘し、法制審議会における議論への反映を強く求め、勧告、及び質問いたします。
【質問】
オーストラリアやイギリス等の国々でも、日本同様9割以上が同居親になっているので、日本の単独親権下で女性が親権を取ることに問題がないという小川富之氏の発言に対しては誰も質問をしませんでした。一方これを前提にしてアメリカの法制度について山口亮子氏に質問がなされています。
共同親権・共同養育を行っている海外では、別居親の面会交流は年間100日程度が保障されていますが、日本の場合は、裁判所を通しても面会交流時間は年間1日(月1回2時間✕12ヶ月)程度が基準になっており、さらに面会交流権が法的に整備されていないため、裁判所の取り決めがあっても40%が反故にされている現実があります(小川氏の調査によれば、オーストラリアでは2009年~2010年において、2週間に1度以上の面会交流が実施されている割合が5割を超えますが、日本の司法での取り決めのうち2週間に1度以上の割合は10%程度です、添付資料参照)。
このような100倍以上に及ぶ、別居親の養育時間の格差を無視した議論は暴論ですが、審議会では疑問すら出ませんでした。
もしかして、法制審議会は、男性の育児への障壁を著しく高くしている日本の現行制度を守ることで、男女間の養育格差、男女差別を国内外問わず維持することが目的ですか。
【勧告1】
親権も養育権も「基本的人権」である大前提を確認してください。
その上で、子どもの社会における位置付けを議論をする必要があることを指摘致します。
【勧告2】
9月分の勧告でも申し上げましたが、再度勧告させて頂きます。
DV問題と共同親権・共同養育問題を一体的に捉えるのは不当です。DV被害者の保護が解決しないと共同親権・共同養育することは危険であるとしたり、単独親権でないとDV被害者の保護ができないという主張は虚偽または錯誤です。DVと共同親権・共同養育問題は全く別の問題であり、片方を推進することが、片方の抑制になるトレードオフの関係にはありません。DV被害を受けた割合の男女比は3:2で、離婚後に子どもの虐待を行っているのは、親権をもった母親や、母親の新しいパートナーが多いことを考えても、単独親権がDV・虐待の抑止にになっているとはいえません。男女平等論に立てば、親権は父母の両方が持つ前提になります。よって、DV問題と、共同親権・共同養育問題は完全に分けて議論してください。
【勧告3】
婚外子の扱いついては、共同親権を制度化することによって解決する問題ですので、是非その観点からの議論をしてください。
再度申し上げますが、審議会ご参加の皆様には、法律の不備のため、被害を被り、苦しんでいる子どもや親が、日々増加していることを意識して、不真面目な議論はやめてください。
この勧告書は請願法に基づき、委員会審議時に各委員に配布回覧してください。また質問への答えは、次回の法制審議会で議論し、回答を取りまとめてください。議事録で確認いたします。
以上