中日新聞宛質問状

2021年10月4日

中日新聞代表取締役社長 大島宇一郎 様

中日新聞記者 小林由比、出田阿生 様

長野県下伊那郡大鹿村大河原2208
共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会(担当 宗像充)

 お世話になります。私たちは子どもと引き離された親を中心に、単独親権制度の違憲性を訴える国賠訴訟を提起しているグループです。中日新聞でも私たちの訴訟について紹介していただいたことがあります。私たちは同時に、性別・被害加害問わず脱暴力の活動にも取り組んでいます。

 私たちは現在の単独親権制度が、実子誘拐や親子分離を促進する人権侵害行為を促進している点から、その改廃を求めて裁判で争っています。同時に現行親権制度が暴力防止の観点からも役立っていないどころか暴力を助長する点があることについて、度々指摘してきました。

2021年6月30日付・7月1日付東京新聞朝刊「離婚後の『共同親権』導入していいの? DV被害が続く懸念 法改正した欧米でも見直しの動き」について、私どもが訴訟を通じて単独親権の改廃を求める活動が、あたかも暴力を促進する行為であるかのように捉えられかねない記述があり見過ごせません。同時に別居親子の権利について一方的な観点で構成されていたため、ここに疑問点とともに質問させていただきます。

1 記事では面会交流を明記した改正民法が2012年に施行されてから、家庭裁判所が面会交流を強制するようになったとの記載があります。

司法統計によると、調停・審判を申し立てたうち、成立・認容の割合は2019年には51.96%と約半分しか取り決めができておらず、その内容は月に1回4割以上(多く2時間程度)です。この割合は10年で4.83%しか上昇しておらず、現在も申し立てたうち2割が申立を取り下げて諦めています。このような数字をもとに、一部のケースを取り上げて全体を語るのは不公正だと思いますが、中日新聞の見解は一部の不適切な事例を出さないために、本来なら、離婚後に両親が子に関るべきではないということでよいでしょうか。

2 記事では毎日息子の練習に口を出す父親の行動をもとに、「元夫が息子の”ストーカー”に」という見出しがあります。毎日子どもの行動に口を出す親はたくさんいて、それは虐待かもしれませんが、だからといって、いっしょに住んでいる限り「ストーカー」とは呼ばれません。私たちの会には、元妻やその夫、その弁護士に子どもに「つきまとう」と言われたため、名誉棄損で訴訟をしている父親がいます。

実際には、児童虐待の加害者の割合は47.7%で実母が割合として一番多く、にもかかわらず母親が裁判所で親権者として指定される割合は91%です。

中日新聞が、通常家族関係に用いるべきでない「ストーカー」という用語を用いて別居親子の関係を表現するのは、私たち別居親(特に男性)が嫌いだからですか。

3 記事では、家庭裁判所調査官経験者の熊上崇さんの「DVや虐待があったケースでさえも、面会交流をさせられていることは問題」。「『会いたい』という親の意見だけでなく、面会交流をしたい、あるいはしたくないという子どもの意見も尊重すべきだ」という見解が紹介されています。私たちは両親による子どもの養育が婚姻外外問わずなされるべきだと考えていますが、その際、親の暴力がないのが望ましいのは言うまでもありません。しかし、裁判所が指定した親権者のかなりの割合に虐待者が含まれており、暴力防止のために現在の単独親権制度が有効であるとも考えていません。

実際、単独親権制度のもと、毎年毎年DVも虐待も過去最高を記録しています。中日新聞が共同親権制度に比べて、単独親権制度がDVや虐待の防止に有効に機能していると考える理由はなんですか。

4 「面会交流をしたい、あるいはしたくないという子どもの意見も尊重すべきだ」というのであれば、そのような発言が度々出るような、現在の月に1度2時間といった裁判所の面会交流基準こそ見直すべきだと私たちは考えます。もし子どもの意見が何よりも優先されるなら、いっしょに暮らす親が子どもから「会いたくない」「顔を見たくない」と言われたら、親はどうすればよいでしょうか。

5 記事は、オーストラリア、アメリカ、カナダで子の安全について配慮する法改正がなされたことを根拠に、単独親権制度を維持すべきという主張が紹介されています。私たちは単独親権制度は暴力の抑止にはつながらないという見解ですが、実際には、オーストラリア政府は、単独親権制度に懸念を表明しつつ、日本の家族法の改善を求める要請を2020年に行っています。2020年には、実子誘拐について日本を非難するEU議会の請願が採択されています。そして、先日9月29日には、米下院外交委人権小委員会で、国際結婚破綻時の子どもの連れ去りに関する公聴会が開かれ、委員長は「日本は共同親権の概念を認識していない」と述べ、子供を取り戻すため日本に対し国務省が厳しい措置を取りやすくする新たな法案を準備していると明らかにしています。

 中日新聞が日本の単独親権システムが暴力防止に有効であると考えているのであれば、こういった国々に対し、日本の単独親権システムの利点を積極的にアピールすべきと考えますが、具体的にはどのようなことを今後する予定ですか。

上記質問状への回答は、10月18日までに、上記住所まで書面で送付ください。