新型コロナウィルスによる緊急事態宣言を理由とした家裁の期日取り消しに対し、活用すべき家事事件手続き

東京家裁では、新型コロナウィルス対策として、期日の取り消し措置を行っています。

https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/R020407.pdf
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/200430.pdf

この件に関して、当会では最高裁宛に親子関係維持の要請を行っていますが、家庭裁判所が今回の事態に対し、積極的な介入を期待するところです。

一方で、家事事件手続きについての法制度は「家事事件手続法」に基づいており、この条文を当事者は積極活用することで、当事者は家庭裁判所に緊急の対応を求めることができます。一言で言うと、家裁裁判官の権限は非常に大きく、「親子関係が損なわれていること自体が緊急事態」との認識をもっていただき、当事者のために法を駆使することが期待されます。

以下の引用条文は、すべて家事事件手続法によるものです。コロナを理由にした親子引き離しという事態に当事者と家裁が活用できるものですが、実際にはコロナを理由にしない案件においても、日ごろから活用されるべき条文です。

期日に関する条文は以下になります。

今回の期日の無期延期は多分、この条文を根拠にしていますが、「顕著な事由がある場合」にあたるかどうかという議論があるのと、実際は、期日の変更について、無期延期になっているので、これが超法規的措置(つまり違法)になっている可能性があります。


(期日及び期間)
第三十四条
 家事事件の手続の期日は、職権で、裁判長が指定する。
2 家事事件の手続の期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
3 家事事件の手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り、することができる。
4 民事訴訟法第九十四条から第九十七条までの規定は、家事事件の手続の期日及び期間について準用する。

調停に代わる審判については以下。 暫定的な審判はこれを根拠にさせればよいです。

(調停に代わる審判の対象及び要件)
第二百八十四条
 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。
2 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
3 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

また、こちらも活用できます。面会交流について合意できているとき、頻度とかを裁判所が決めることができます。

(合意に相当する審判の対象及び要件)
第二百七十七条
 人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
一 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
2 前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。
3 第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事(調停)
: conciliation, mediation[「紛議の調停」の場合] / 紛議の調停調停委員の意見を聴かなければならない。
4 第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。

暫定的な審判を変更するときは以下。

(審判の取消し又は変更)
第七十八条
 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。
一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判
二 即時抗告をすることができる審判
2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の取消し又は変更をする場合には、その審判における当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聴かなければならない。
4 第一項の規定による取消し又は変更の審判に対しては、取消し後又は変更後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

現時点で当事者が活用するものとして以下。

第百五十七条 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、次に掲げる事項についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、当該事項についての審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分
二 婚姻費用の分担に関する処分
三 子の監護に関する処分
四 財産の分与に関する処分