当事者・お困りの方向けのQ&A

共同親権に関する一般的なQ&A



当事者・お困りの方向けのQ&A

Q 民法改正の動きは今どうなっているのでしょうか?

 私たちは単独親権の撤廃を目指して公論に訴えていますが、法改正手続きは国の担当部署や国会での議論を経ることになります。その動きについては、法務省民事局参事官室やお住まいの地区の国会議員などにお聞きください。問い合わせること自体が関心の高い事案であることを伝えることになります。

Q 学校に子どもに会いに行くのに何か法的な問題がありますか?

 裁判所から接近禁止の命令が出ていない限り法的な問題はありません。敷地や家の中に入ると住居侵入などで逮捕された事例がありますが、立件に結び付くかは場合によります。

Q 子どもが住む家に行くと警察を呼ばれますか?

 同居親側に通報されて警察が来た事例は少なくありません。そういった場合は子どもの安否確認の必要がある、と事前に警察に相談し、止められた場合はむしろ子どもの状況を調べるように彼らに促してください。実際に家に行く場合は同伴者とともに行ってください。一度で成果は出ないかもしれませんが、続けることで周囲の理解が得られる場合があります。

Q 面会交流に強い弁護士を紹介してほしいのですが?

 そういった弁護士はいません。制度が整っていないので、どんなに弁護士にやる気や経験があっても、同居親の意向次第という側面は否定できないからです。「ノウハウがある」「私に任せておきなさい」と言われて実際には会えずに、弁護士から自分のせいにされて傷ついたという相談も少なくありません。離婚事例に慣れた弁護士ほどこの傾向があります。実際に弁護士が必要かどうかも含めてご相談ください。

Q 役所に行くと子どもの住所を教えられないと言われました。どうすればいいでしょうか?

 DV・虐待・ストーカーについての住所非開示の支援措置が出ている可能性があります。この措置は警察や女性センターへの相談履歴だけで出され、撤回する手続きもありません。こういった場合、(元)配偶者の実家や、(元)配偶者の弁護士あてに調停の手続きを申し立てることができます。それもわからない場合は、区市町村の役所と裁判所双方に連絡をとり、役所から裁判所に住所を伝えて調停手続きを進めることができます。
 多くの場合、住所を隠すには公的な支援だけでなく実家の支援があることが多く、その後実家やその周囲に住まうことが少なくありません。それで子どもに会えるようになった方もいます。家庭裁判所には何度でも申し立てることができます。あきらめずにできる手続きや方法をご相談ください。

Q 子どもを連れ去られたので誘拐だと思います。警察に訴えることはできますか?

 他人がしても親がしても誘拐は誘拐です。警察や検察に未成年者略取誘拐で告訴することもできます。立件された事例はまだないですが、受理される事例が増えています。

Q 妻(夫)の弁護士からメールが来て、妻(夫)の住所を知ろうとするとストーカーやDVとして法的手続きをとると言われています。

根拠もないのにこのような言動をとれば脅迫罪の可能性があります。子どもの住所を知るのは親の責任であることを伝え、どのような根拠があるのかを質問し、文書での回答を求めましょう。悪質な場合は告訴も選択肢です。

Q 子どもに会えなくて何もやる気が起きません。死にたいです。

そうなるのは当たり前です。でも死ぬのは今じゃなくてもできるので、一度「会えない親子のホットライン」(0265-39-2116、第1、3火曜日午後7時~8時半)に電話してください。また当事者の自助グループに出て、他の人のお話を聞くことも前向きになるためには役立ちます。ピンチのときに人に頼るのは恥ずかしいことではありません。

Q 妻(夫)が面会交流の約束を守ってくれません。

 調停調書などの書面での約束がある場合は、家庭裁判所に電話して履行勧告を不履行者に出させることができます。また、将来の履行を確保するために、制裁金を課す間接強制という強制執行の手続きを裁判所でとることができます。面会交流の時間・頻度(「2週間に1度など、第1、第3の週末は金曜の18時~日曜の18時まで父親と過ごす」など)、方法(「〇〇駅横の交番の前で受け渡しをする」など)などが定められていれば強制執行がかかります。
 また、約束の内容が詳細でなくても、過去の不履行については地裁に損害賠償の請求をすることができます。口約束でも民法上の契約です。これらの手段をとることで安定的な面会ができるようになった事例も少なくありません。

Q 裁判所の調停委員に「今は面会交流の頻度は月に1回が普通。会えないよりいいでしょう」と言われます。

 裁判所や法務省は常々「個々の事例に応じて判断している」と公言しています。自分のケースにおいて、どうして他のケースと同様、月に1度が適切であるのか、それ以上の頻度がなぜ不適切なのか、説明を求めてください。裁判所の説明に合理性を感じない場合は、「それは子どもの福祉ですか」「親の子育てに過剰介入しすぎではないですか」と述べてください。打開できない場合はご相談ください。

Q 自分の弁護士に、「社会に実名を出して訴えたい」と言うと、裁判所で不利になるのでよしたほうがよいと言われます。

 社会的に差別を受けるマイノリティーが実名で人権を訴える行為は勇気あることです。あなたが社会に訴えたいという目的と、裁判所での当座の成果を得たいという目的と、両立や兼ね合いを判断してください。いずれにせよ、裁判所職員の嫌がらせや差別と闘う意思のない弁護士は頼りにならないのでお勧めしません。

Q 裁判官に「相手が協力しないと面会交流はできない」と言われ、相手から子どもの写真を送るだけという決定が出されました。

 こういう場合、家庭裁判所は使えないので、何らかの形で直接子どもと会う方法(家に行く、学校などに行く)を検討することができます。また居所がわからない場合は、何度でも家庭裁判所に申し立てできます。時間はかかりますが、子どもに親が気にかけているというメッセージを送ることは可能です。いずれにせよ粘り強く取り組むことで、実際に子どもと触れ合うことができるようになった方がいます。ご相談ください。

Q 調停委員に、「子どもの世話をするのは母親が当たり前」と言われます。

 こういった発言は性差別です。職員の人権侵害行為に対する苦情窓口は総務課です。また、家庭裁判所長に手紙や要請を送ったり、家庭裁判所の人事局や家庭局に苦情申し立てをすることができます。実際に担当者が変更されたという事例があります。


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共同親権に関する一般的なQ&A

Q 共同親権になると、夫婦間の合意形成が困難な場合に不都合が生じるのでは? たとえば、「進学に同意してほしければ言うことを聞け」など、同意権を濫用するのでは?

 実際には欧米ではあまり深刻な問題にはなっていません。
たとえば、アメリカでは離婚に際して、財産分与、養育費、親権、面会交流などについての養育計画を裁判所に提出し、裁判所の承認を受けることが必要です。 行政や裁判所が養育時間の配分についてひな形を複数用意し、半々の養育時間の配分や、100日~120日の面会交流など複数のプランが選べるように促され、指針となるとともに不合理な取り決めは抑止されます。
 アメリカ弁護士会によれば、「離婚については、おそらく95%以上のケースで、対立的な訴訟ではなく、当事者だけの話し合いか、調停員による調停か、弁護士の助けを受けるかで、合意が成立しています」(The American Bar Association Guide to Family Law, The American Bar Association ;1996)。裁判所が決めるのは全体のケースの2~10%です(Lamb Michael E;2010,The role of the Father in Child development)。
 共同親権が定着していても、不合理な取り決めや支援の不在がもめごとを起きやすいのは日本と同じです。

Q 共同親権で親の意見が一致しない場合は、どうなるのですか?

 協力しての子育てが困難な場合は、交互に子どもを見ることになります。たとえば、父親の家にいるときは父親の意見を優先させ、母親の家にいるときは母親の意見を優先させる。また、意見を優先させる側を1年ごとに交代する方法がとられることもあります。
 意見の不一致が起きやすい状況でよくあるのは、たとえば、課外活動(塾、スポーツクラブ、習い事など)にかかるお金を誰が負担するかなどです。最初に「課外活動にかかる費用は、父親が60%を負担し、母親が40%を負担する」などと決めておきます。最初に行き届いた養育計画を作成しておくで、後の争いを避けることができます。
 父親の家と母親の家で教育方針が異なっていても、実際には子どもはその状態によく順応することが知られています。

Q 単独親権と共同親権の違いは絶対的なものですか?

 両者の違いは相対的で量的な差にすぎません。養育時間(子どもといっしょにいる時間、身体的親権)は0%から100%まで連続的に変化します。また法的親権(決定権)も多くの項目において、分けて分担することが可能です。
 アメリカの多くの州で、身体的共同親権の定義は、養育時間が決められた基準以上(20~40%)であることとされています。単独親権の定義は、子どもといっしょにいる時間が決められた基準以下であることとされています。

Q 家庭裁判所は子どもを見るのにふさわしい親を親権者にしているし、原則的に面会交流を指示している。単独親権制度で子どもと会える人はいるんだから、共同親権に変える必要はないのでは?

 家庭裁判所で親権者の指定を受けるには、子どもを確保する必要があります(財団法人日弁連法務研究財団編『子どもの福祉と共同親権』はしがき)。こういったことはすでに一般に知られています。だから男女問わずDVや虐待の加害者が単独親権者になる連れ去りも続発しています。
 また、家庭裁判所に「子どもに会いたい」と調停を申し立てても、何らかの取り決めがなされるまで、1~2ヶ月に1回の調停が半年から長ければ2年以上かかります。法律業界の慣行で、調停期間中に親に子どもを会わせない弁護士もいて、そうなると家庭裁判所は無力です。
 面会交流の申し立てたうち、55%ほどしか取り決めができず、その約4割が守られていません。しかも、その取り決めはよくて月に1回2~3時間が6割です。共同親権にして、もっと多くの親子がともに過ごせるようにしたらどうでしょう。

Q 共同親権制度を作ったとしても会うのは面会交流。相手が合意しなければ共同親権にはならない。「子どもに会いたい」から共同親権を主張するのは本末転倒では?

 面会交流が親権者の意向で左右されるので、実際には同居親が拒否すると日本では子どもには会えなくなります。たとえ子どもが別居親に会いたくてもそういった環境で自分の気持ちは表明できません。そのような理不尽さを解消するために共同親権のもと、同居別居問わず、子どものための話し合いを促す仕組みが必要です。
「相手の合意がなければ共同親権にならない」のではなく、「共同親権だから対等な立場での合意が促される」のです。裁判所では育児への実際のかかわりが評価されるので、男女の育児が同居・別居かかわらず促されます。
 そもそも親が会えない子どものことを心配するのはおかしなことでしょうか。

Q 共同での子育てが困難な親や、「問題のある親」には親権を与えず、合意ができる夫婦のみに共同親権を認める選択的共同親権がいいのでは?

 これでは、現在の一方の親の同意のない子どもの連れ去り問題は解決しません。
 「婚姻中」のみ単独親権とする民法上の規定を廃せば、すべての親に養育権があることが見直されます。父母が子どもに危害を加えたりした場合、「婚姻」内外にかかわらず、現在の民法にある親権喪失や親権停止の制度が機能します。「選択」を子ども連れ去った加害者に委ねる弊害もありません。
 必要なのは、合意が困難になっているカップルを支援し、子どものためにフェアな合意を取り決めさせる仕組みです。

Q 海外では近年、共同親権は見直される動きになっていると聞いています。

「オーストラリアの2011年の法改正で共同養育の法制度が廃止された」といった事例を挙げて、こういった主張がなされたことがあります。例えば、2006年の家族法の改正では、両親による「均等な養育責任」が定められていたのが、文字通りの養育時間の均等を指すわけではないとされています。家族間暴力への対処や両親間の紛争の抑止は、「父親の権利」の確保とともに常に各国の法改正の課題でした。
 しかし共同親権に移行した国で単独親権に戻した国はありません。ほぼすべての国が以前は日本と同様の単独親権をとっていたのです。
 実際、日本とオーストラリアの別居親子の交流頻度の違いは、オーストラリアでは(小川富之「オーストラリアの離婚後の親権制度」2009~2010年の調査)、毎日・毎週と2週間に1度を会わせると約5割になり、年1回以下若しくは交流しないは25.7%です。3%は平等に子の養育を分担する取り決めをしています。
 一方日本では、面会交流の実施率は3割(平成28年度全国ひとり親世帯等調査)、家庭裁判所が指示する交流の頻度は月に1度2時間が一般的です
 別居親の養育権が当然のように保障されている国を、親が別れれば大半の親子が会えなくなる日本と比べて「共同親権の見直し」と呼ぶのは不適切です。

Q 単独親権から共同親権になると、父親の養育費負担は減るのですか?

 共同養育に移行すると、父親の経済負担は増えます。子どもの衣食住をまかなう費用が増えるためです。

Q 共同親権では養育費の取り決めはどうなるのですか?

 父母の養育時間の配分と反比例して養育費の額が変動するのが一般的です。たとえばアメリカのウィスコンシン州では、父親(母親)の養育時間が24%までは養育費の額は変わりません。しかし父親(母親)の養育時間が25%以上になると養育費は減額され、父母の養育時間が半々であれば養育費は0になります。
 実際には、国ごとに様々な方法や変動の基準が定められ、父母の合意があって、裁判所が容認すれば、どのような養育費にすることも可能です。

Q 単独親権制度はDVや虐待の抑止になっている。共同親権では子どもを連れて被害者が逃げられなくなるのでは? 

 単独親権制度のもと、DVや児童虐待の相談件数は年々増え続けています。単独親権制度がDVや虐待の抑止になっているという主張に根拠はありません。  またDVは婚姻中の共同親権のもとで起きていますし、逆に児童虐待は単独親権のもと、実父母家族よりも、ステップファミリーの親やひとり親が加害者となるケースが多いのです(中澤香織「家族構成の変動と家族関係が子ども虐待に与える影響」)。子どもの安全への配慮がもっとも適切になされているのは、父母が子どもの養育にかかわっている場合です。
 一方、単独親権制度のもと、DVの被害者も子どもを連れ去られます。その結果、子どもを引き離すというDVや囲い込んだ子どもへの虐待の継続を促すことになります。被害者が身一つで逃げても養育を継続できるためのDV施策は必要ですが、単独親権でそれが実現できるわけではありません。

Q 面会時に元配偶者や子どもに危害が加えられる恐れがあり、実際に殺人事件も起きている。

面会交流中の殺人事件の背景に、子どもと会えなくなったことで人生に希望を持てず絶望し、また、将来的にもこのまま会えなくなるかもしれないという恐怖心が働いている可能性もあります。単独親権が事件を引き起こす事件は少なくありません。別居親が起こした事件だけをことさら取り上げて危険視するのはヘイトです。

Q 共同親権になると、子どもが虐待される危険が増すのでは?

 現在、虐待の加害者で一番割合が高いのは実母(厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」)で、例年半分以上の割合を占めています。一方、親権者の8割が女性ですが、虐待の加害者のうちひとり親家庭の占める割合は約3割です(全国児童相談所長会「全国児童相談所における虐待の実態調査)2008)。共同親権は母子家庭の孤立を防ぎ、虐待を抑止する効果を持ちます。

Q では共同親権に移行した国々では、どのように家族間の暴力に対処しているのですか?

 家族間の暴力でも初期の段階で警察が介入し、暴力抑止のための命令に裁判所も関与します。一方子の連れ去りも刑事罰の対象です。暴力抑止と安全確保の措置を適切に図ることで共同親権制度との両立を図っています。
 日本では、女性(男性は保護の対象にならない)の被害の相談履歴だけで、物理的な暴力がなくても保護がなされ、親子が一生会えなくなることもあります。暴力の有無の確認だけでなく、被疑者の手続き保証がなされなければ、個人が社会に恨みを抱き、さらなる暴力の原因となりかねません。
 家族間暴力への刑事的な介入と、暴力そのものを夫婦双方が手放せる支援がないので、子の連れ去りが「自力救済」として容認されているのです。 

Q 共同親権では再婚家庭に混乱と複雑化を招くのでは?

フランスでは、週末毎に元パートナーのもとにいる複数の子どもの送迎を車でする父親の様子が、テレビCMになっています(2011年、ルノー)。親たちの感情の問題はあるでしょうが、自分にあった家族のあり方を選べるのは、親子関係を保証する共同親権があるからです。子どもにとっては「お家が二つ」になります。再婚家庭で育児経験のないパートナーがいきなり親の役割を負わされるより、それを周囲が認めることが一番シンプルではないでしょうか。

Q 子どもが別居親と会うのを嫌がっている中で裁判所が面会交流を明示すると、将来的に関係が破綻しやすいという米国の調査もある。

 引き離された子どもが別居親に敵意を向けたり、「会いたくない」と言い出すことは「片親疎外」として海外では知られています(WHOで国際疾病分類(ICD-11)に登録された健康障害)。親子の引き離し行為は児童虐待なので、こういった状況を生み出した同居親側の責任も問われます。
 引き離していったい誰が子どもの面倒を見るのでしょうか。親が婚姻関係にあれば、子どもが「顔もみたくない」と言っても、子どものために家を用意したりはしません。親子の確執があるのも、親子喧嘩ができるのも、継続的な親子関係が保障されているからです。

Q 離婚協議中、子どもを会わせたがっている母親が、離婚が決まりそうになると父親から年に100日の面会を強要されて困った事例がある。共同親権になるとこういった事例が増えるのでは?

 年に100~120日の養育時間の分担は世界標準ですが、実際には調停が審判に移行して日本で100日の面会になった事例は聞いたことがありません。日本の基準は月に1回2時間程度だからです。
 たしかに共同親権になれば、こういった時間配分のケースは一般的になるかもしれません。ただ、もともと夫の子育てへの関与に不満を抱いていたなら、それは歓迎すべきことで困った事態ではありません。今からでもさせればいいのではないでしょうか。

Q 共同親権になると、離婚が増えるのでは?

 いいえ、共同親権への移行後、1、2年以内に、その地域の離婚率は低下します(Child Custody Policies and Divorce Rate in the US,Richard Kuhn)。
 単独親権下では、夫婦仲が悪くなってくれば、相手が用心する前に手を打って子どもを連れ去らないと、離婚交渉で不利になるおそれがあります。しかし、共同親権下なら、そのような配慮は不要になるからです。

Q 単独親権制度は日本的な家父長制度の伝統を反映したもの。日本の伝統に合わない。

 現在の単独親権制度は、明治時代に戸籍と、家長のみに親権があった民法が整えられてからのものです。日本の伝統ではありません。女性の親権取得が男性を上回るのは1966年以降です。
 それ以前の日本、つまり記録の残る江戸時代では離婚は平均4.8回。世界最多のロシアを上回っていました。仮に単独親権制度が定着しているとしても、優先すべきは伝統ではなく男女平等です。

Q 個々の親の養育のあり方を第三者が監視する制度がほぼ存在しない現状で共同親権を導入すれば、「子の福祉」が害される。

 根拠がありません。現在でも、児童相談所が受理する虐待相談件数で、ステップファミリー、ひとり親家庭の件数が実父母家庭の件数よりも明らかに多く、単独親権制度で子どもへの虐待は置き続けています。子育ての意思がない親、困難を感じる親であっても、養育の義務を果たさせる法制度と、自分の子どもへの配慮ができるようになる支援はすぐにでもなされるべきです。
 同居親側の意向のまま裁判官の主観で親子の引き離しを放置し、親の養育権に過剰介入している現在の制度が、親と触れ合えない子どもを増やし、社会の基盤を壊しています。

Q 子どもを連れて家を出た母親102人への調査( しんぐるまざぁずふぉーらむの調査 )では、「原因の90%以上が身体的な暴力、それ以上に精神的な暴力だ。家を出ることを夫に口頭で伝えられた方は17%なのに対し、伝えられなかった方は4割」(ヤフーニュース「法務省も研究会立ち上げへ! 離婚後の親権制度、日本ではどうあるべき?単独親権派と共同親権派が討論」。その場合、子育てはほとんど妻が担っており、こういった場合に子どもを置いて出て行ったら、ネグレクト、育児放棄が起きてしまう。子どもを連れて出るしかないので、「連れ去り」ではないのでは?

 DVは主観的なものです。したがって、連れ去った側の9割がDV被害を訴えたからといって、連れ去られた側に聞けば同じようにDV被害を訴えるかもしれません。
 実際、女性の3人に1人、男性の5人に一人がDV被害を訴えており、過去1年間で見ると男性の被害の割合のほうが女性よりも高くなっています(2017年度「男女間における暴力に関する調査」)。夫婦間に葛藤がある場合、双方が被害感情を持つのは普通だからです。全体の割合の問題で個別の連れ去り被害を免責するのはどうでしょう。
 子どもを置いて出ていけば育児放棄と批判を受けるのは、子どもといったん離れれば、親権もその後子どもと会う保証もなくなるからです。女性が子育てをしているんだから、被害感情があれば同意のない子の連れ去りを肯定できるという発想は、性別役割分業を奨励し男女平等に逆行します。

Q 2018年に目黒区で起きた船戸結愛ちゃんの虐待死事件で、母親が「夫の合意が得られず逃げられない」と思い込み、逃げそびれたことが事件につながった。子どもの虐待とDVは切り離せないのでは?

 母親の加害行為も裁判では認められていますが、母親の夫は継父です。むしろ、船戸結愛ちゃんは「前のパパがよかった」と話しています。子どもが実父に断りなく養子縁組されれば、親権のない親と子の交流は裁判所でもなかなか認められず、親権者変更もできません。船戸結愛ちゃんは単独親権制度の被害者です。
 2019年には池田詩梨ちゃん(札幌市)、大塚璃愛来ちゃん(鹿児島県)、進藤遼佑君(栃木県)が、同居親もしくは同居親のパートナーによる児童虐待で死亡したり殺害されたりしています。進藤遼佑君も「お前なんか本当の父親ではない」と遼佑君を殺した継父に対して発言しています。
 共同親権のもと、実の父が十分な養育の時間で親としてかかわるのが当たり前の環境であれば、こういった事態に陥るのは考えにくいのではないでしょうか。

Q 「子どもの権利条約」では9条で「親子不分離」の原則が規定されている。日本はこれを批准しているのに、他の国と同様、なぜ共同親権にしないのか?

 女性の自立を疎外し、男性を酷使してお金を取るために、単独親権制度が必要な人たちがいるからです(法律家、シングルマザーやDV被害者支援団体、面会交流支援団体などの引き離しビジネス)。
 同時に日本は、国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約を2011年に批准しています。この条約実施のための国内法では、第2条1項6号の「不法な連れ去り」の定義で「常居所地国の法令によれば監護の権利を有する者の当該権利を侵害する連れ去りであって、当該連れ去りの時に当該権利が現実に行使されていたもの又は当該連れ去りがなければ当該権利が現実に行使されていたと認められるものをいう。」としています。つまり日本国内の法律でも養育権侵害は不法な連れ去りです。
 しかし、日本の裁判所の実務では、日本国内での子どもの連れ去りは違法としていません。業界の利益のためにダブルスタンダードに目をつぶっているからです。




「疑問はちょっとは解けたでしょうか?」(最後に)

 親権は、「親の権利」と書かれるため、何か権利を取り合うものと誤って認識されがちです。実は、子育てのための親の義務でもあります。諸外国では、親権を親責任と名称を変更している国もあります(イギリス・オーストラリア)。

 日本においても、「お金/子どもの面倒」と性別で義務を押し付け合うのではなく、親どうしの関係がどうあれ、経済的にも実際の子どもとの触れ合いの面でも、双方の親が義務を果たしていくと認識を変える必要があるのではないでしょうか。

 親子が親子であることで持てる歓びや実感を、私たちは権利と呼んでいます。あなたはどうですか?