2021.11.25もっと共同親権、第6回口頭弁論レポート

東京家裁申し入れ

令和3年11月25日東京家庭裁判所にて共同親権を求める裁判(第6回口頭弁論)が開かました。

これに先立って、最高裁判所長官 大谷直人、東京家庭裁判所長 中里智美宛てに「親子の交流が断絶されない家事司法を求める要求書」を東京家裁総務部に手渡し、申し入れを行いました。

第6回口頭弁論

本日の口頭弁論は原告側のタームで、意見書を提出いたしました。準備書面3と証拠資料として証拠説明書7にて甲32号証から甲46号証まで、過去の文献と憲法学者による意見書等を提出いたしました。

今回の準備書面3は、これまで国側が単独親権の意義として「婚姻制度の意義」という言葉を用いていたが、その言葉から「両性の平等」と「子供の利益」に言及してきたことに対し、これらの用語が戦後の親権制度の改革議論の中でどのように扱われてきたのかを明らかにしたものである。詳細は省くが、1947年の5月3日に施行された日本国憲法の理念に沿ったものが、「婚姻内外問わずの共同親権」であり、現民法は家父長制度からの脱却がでず、反省なきまま「非婚時の単独親権」を残してしまったのがわかる。

口頭弁論では、憲法13条違反についての主張(養育権の侵害)は今回の準備書面3でいったん終了とし、次回期日からは憲法14条(平等権)違反について焦点を当てていくこととなった。詳細は別途裁判所からの事務連絡となるとのことだが、裁判官から細かい指示があり、次回期日までの準備書面作成の方向性が示された。弁護団によると、裁判所が訴状をよく読み込み興味を持って対応している証とみており、いい流れであるとのこと。

次回期日は、令和4年2月17日(木)14時から806号法廷にて行われる。

院内集会 「共同親権時代の家族支援」

続いて、衆議院第二議員会館第一会議室にて「共同親権時代の家族支援」と題して院内集会が行われました。動画は以下。

ゲストは4名。

渡辺裕子さんはリモートでお話を伺った。渡辺さんは看護師/保育師から医療における家族支援へ活動を広めている。

家族とは、夫婦から始まり、子が生まれ、子育て・親役割と発展していく中で、家族の内部では、個人発達が同時に進行する。当然、安定する時期もあれば、不安定な時期も訪れ、常に葛藤や対立が存在しながらも、家族が互いにケアを行うセルフケア機能を持って構成されている。しかし、近年では近隣コミュニティの弱体化に伴う家族の孤立化や家族の小規模化によって、この機能が低下してきていおり、葛藤や対立をうまく処理できず、離婚へと発展してしまっているのではないか。

共同親権の下で課題となるのは、子と両親の三方良しである。子の意思を尊重し、父母それぞれの意思決定のもと、子の最善の利益を中心とした合意を形成されることが求められるという。共同親権へシフトするためには、離婚後は夫婦としてではなく養育に携わるパートナー(共同責任者)として新たな家族ステージを迎えることを理解しなければならないし、求められる。

共同親権下での家族支援は、親子・夫婦間の関係調整や合意形成がテーマとなってくる。夫婦間の葛藤が離婚後も継続され子に悪影響を及ぼしたり、互いに合意形成を築くのが困難な場面で必要となってくる。しかし、法的整備が全くないので経済的にも非常にハードルが高くなっているのが現状であるため、一刻も早く法的支援が整うことが望まれる。

共同親権となった場合には、自分の幸せや生き方について個人で考え、判断しなければならないことは増えてくるため、支援のニーズも高まってくるであろうとのこと。

天野誠一郎さんは東京都国立市で長年自立生活を続ける車いす生活の障碍者。座長として、「国立市しょうがいしゃがあたりまえに暮らすまち条例」(2015年)策定に尽力し、現在は心身障害者訓練事業所であるNOP法人たんぽぽの理事長である。

障害者からみた共同親権とは如何に。

まず、障害者が生まれるとその瞬間家族の人生が一変する。家族はその障害者中心の生活となり、誰も幸せになれない。本人自身も幸せではないという。精神的自立も家族の成長も止まる。全ての時間が止まり、タイムトンネルに放り込まれた感覚になると。

国に役に立たない障害者は存在として認められない。その家族は障害者を抱え込まなければならなくなる。国は家族の最高責任者である家父長のもと責任を父親に擦り付け、父親は障害者を生んだ母親のせいにする。障害者は一生涯にわたり母親方の親族にたらいまわしにされる。これは無意識のうちに行なわれている。女性は被害者と位置付けられ、子供の立場は固定化されていく。ここで女性は生活していくために権利も主張するようになる。この表裏一体の関係から女性解放運動の一環となっていく。

男は男で、家族を捨て離婚を選択する者と、子の養育に関わろうとする者に二分される。片方の親に親権が移ってしまうことが問題であり、権力を当分してしまえば良いのだが、平等に親権を規定する制度がないこともまた問題。子の人権をいかに保障していくかを目指してほしい。子育ての最大の目標は、自分のことは自分でできるようにすることだが、障害者にとってこれは悪である。とにかく自分でできないのであるから。

であれば、できないことは他者に手伝ってもらえば良いのではないか。障害者であろうが健常者であろうが。こうやってコミュニティを広げて、生きる力をつけていく必要がある。それは個々人が自立していくこと。

高橋考和さんは、一般企業に勤めるかたわら、家族問題に関する執筆活動を行う作家。

これまで養育権は人権であるということを言及してきている。

今回伝えたいことは以下の3点。

  • 親による子を養育する権利は基本的人権であることは当たり前である。養育権が基本的人権でなければ、誰が養育するのか。結論は国が決めることになる。国の暴走を防ぐために「人権」という概念が戦後世界的に発達してきたのである。
  • 1994年に「児童の権利に関する条約」に批准し、子が親に養育される権利(被養育権)と親が子を養育権利(養育権)が基本的人権と定められているにもかかわらず、養育権が基本的人権でないという議論をしているのは世界でも日本だけであり、非常に残念である。
  • 国・親・子にそれぞれに権利があり義務がある。三権分立と同じ考えで、チェック&バランスを成り立たせる必要がある。

山本麻記さんは、離婚後訴訟を経て元夫との間で娘さんの共同養育を実践。コーチングの技能を通して人材育成の研修講師や起業、新規事業や共同養育をサポートしている。

面会交流調停や履行勧告、損害賠償請求を経て共同養育に至る。それは、調停での調査官調査で娘さんの意向が尊重されたことと、両方の代理人弁護士が尽力してくれた結果だった。その内容は、元夫婦二人が同じ学区内に住んでおり、子供にキッズ携帯を持たせていたことから、関係は完全に閉ざされていたにもかかわらず交代監護ができた。

その方法は、金曜日に娘さんが学校から母親宅に帰宅、夕方父親宅の玄関先に学校や生活に必要なものが入ったスーツケースを取りに行く。次の金曜日は父親宅へ娘さんが帰宅し、夕方スーツケースを玄関先に届ける。こうすることで両親は顔を合わすことなく対応できる。また、一番のポイントは3人共通のスケジュールアプリを使用し、予定は娘さんが決めることだ。両親が子の意思を尊重することが、子の利益にあたるという理解があったからこそできること。これはなかなかできることではないのだが。

これらの経験から、コーチングの重要性を知ったのだった。コーチングとは対話で人の成長をサポートすることである。その効果は自分で決めたという意識が持てることで、自己肯定感が高まり、最も幸福度が高くなるのだ。このコーチングを通して共同親権時代の家族支援にあたっていきたいとのことだった。

協力関係がないと共同養育はできないといわれている中、山本さんの事例は決して協力関係ができているわけではないが、お互いが子の意思を尊重する方向性に持って行けたのが成功のポイントだ。調査官調査や代理人弁護士を通して粘り強く調整できた結果であるといえる。

別居親に子を合わせたくないと思う同居親の考え方を変えるのは非常に難しく、泣き寝入りしている別居親は多い。法的保証は何もない現状なだけに、共同親権が求められる。このままではひとり親世帯、単身世帯が増えていくだけなので、離婚に至る前の家族支援の回復が求められるのではないだろうか。(М)