養育費の新算定表は男女平等への逆行?

 11月22日に、「共同親権国賠」訴訟を提訴した。法務省は家族法についての検討会を始めたらしい。一方で、最高裁判所が養育費の新算定表を近いうちに公表することが議論されている。

 すでに会にも養育費の増額前提の新算定表に女性から意見が来ている。その方は周囲にシングルマザーのパートが多く、彼女たちの言い分が、「正社員はきついし働きたくない。元夫からの養育費無しでは生きていけない。でも子とは一生会わせない」というものだという。今においても「養育費と面会交流は車の両輪」と語る、面会交流支援団体や学者がいる。こういった発言が、「あなた稼ぐ人、私育てる人」というジェンダーバイアスに基づいているということに疑問すら感じない人が、法務省の検討委員会でこれからの家族法を議論するという。子育てにおける経済的な費用の分担と、子どもの面倒を見る時間の分担と、平等になされるならまだ議論がかみ合う。

 現在の算定表には、連れ去りをして協力の意志のない側が、生活保持義務の算定表をもとに婚姻費用を求めるという問題や、ローンや子どもへの手当てが収入にカウントされず、生活が成り立たなくなるという別居親側の不満を聞く機会があり、問題があることはたしかだろう。

 8割が未払いな中、養育費を払う2割は責任感があるほうだ。逆に言えば2割からしか養育費をとれないわけだけど、その「いい親」たちの負担を懲罰的に上げてどうするのだろう。そんなに苦しいなら子どもと会わなくてもいいという親が現れて誰も責められない。

養育費増額の理由に母子家庭の貧困があげられる。格差社会が広がる中、男女間の賃金格差が解消されないことはあるだろう。でもそれは「稼げない男」が原因か。それで、男に依存して疑問に思わない女性の感覚を正当化するなら、冒頭のシングルマザーの発言そのものだ。男女間の待遇差別や賃金格差はOKで、女性の社会進出の疎外の要因になる。これは男女平等ではなく伝統回帰だ。

今回の最高裁の新算定表の議論が、日弁連が貧困問題への対策として1・5倍の新算定表を提示したことをきっかけにしているなら、相当眉唾だ。弁護士たちは、養育費の受け取りを弁護士の口座にしてピンハネするという慣行をいまだに温存させている。そういった連中が「貧困問題の解消」と言ったところで、「自分たちのピンハネ額が上がるからだろ」と言われても仕方がない。

8割の未払いを解消するのに、明石市のように懲罰的に名前を公表するのはどうだろう。「子どもを会わせないのに金をとる」ことの虫のよさは棚上げされ、パワハラ問題で評判を落とした市長の「ええかっこしい」で人身御供にされる別居親はついていない。 

そんなことをするなら、養育時間の機会均等を原則に、養育時間の長さに応じて養育費の負担割合を変動させるほうが、よっぽど公平だし、共同親権の国ではそうしている。単独親権だからと制度のせいにするのは、自分のジェンダーバイアスに無自覚だからだよね。

(宗像 充2019年12月8日)