拝啓国民民主党様 養育費に関する要望書

2020年4月1日

養育費に関する要望書

国民民主党代表 玉木雄一郎 様

 共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会

お世話になります。子どもに「パパかママか」を選ばせる単独親権制度の撤廃を求めるグループです。私たちの会の家族構成は様々で再婚カップルや同居親もいますが、メンバーに子どもと引き離された経験のある親が多くいます。

3月24日付の報道で、国民民主党が、離婚前に公正証書の形での養育費取り決めを義務付ける内容の法案を提出する意向であるということが伝えられたため、私どもの懸念と要望、提案を伝えるため、ご連絡差し上げました。

報道によれば、貴党の法案は、養育費の不払いが子どもの貧困につながっていることから、事前合意により支払い確保につなげることが狙いとされています。

また、国会質疑においては、各議員から最低養育費の提案や養育費の履行確保の手続きの簡素化・改善の提案などが、さまざまになされている状況です。国民民主党の提案も、こういった流れの中で、養育費の履行確保のために提案されたことと思います。実際、養育費の履行割合がせいぜい2割程度で20年来推移していることは問題であり、私どももこういった現状の改善の方策を過去提案してきました。

特に私たちは、別居カップルが、経済面でも実際の子どもとの触れ合い・養育の面でも、男女が実質的な平等を確保できるような機会の均等を、共同親権という形で確保するよう、民法の改正を求めています。その際、養育費の算定表と同様に、養育時間の配分のモデルケースを複数設け、それに準じた迅速な話し合いを促して取り決めを行い、養育費・養育時間ともに履行確保の手段を立法化するのが、それら国々で進められていることです。

日本でも、2012年から施行されている改正民法766条に基づき、離婚届けには養育費と面会交流(養育時間)の取り決めのチェック欄が設けられたのは、双方の履行確保が子どものためになるという、民法766条の趣旨に沿った行政措置でした。

 ところが私たちは、月に1回2時間程度の別居親の養育時間を裁判所が指示することで、多くの親子関係がその後途絶える事例を日常的に見ています。実際、家庭裁判所に面会交流を申し立てたうち、(会わないという取り決めも含め)何らかの取り決めができる割合は、民法766条が改正されてもあまり変化はなく、ここ数年55%程度(司法統計)であり、そのうち4割程度が履行されなくなっています(2014年日弁連調べ)。

一方、この間、最高裁判所は養育費に関する新たな算定表を示し、負担額の高額化を図っています。しかしこれは、男性の雇用環境が悪化する中で男性の貧困化や生活破綻を招くだけでなく、女性の経済的な自立とは逆行する措置であり、むしろ男女間の賃金格差を拡大・固定化し、男性の育児分担を困難にします。このような状況で事実上男性の養育費支払いができなくなり、国による立て替えがなされることになれば、「無駄遣い」とのそしりを免れません。

養育費の履行割合が一向に上がらないのは、履行確保の手段の問題ではなく、別居親が「会わせないのに金を出すのか」と養育意欲を失い、いくら履行を促されても、むしろ抜け道を探す方向へと流れていたからにほかなりません。これを「養育費は子どもの権利なのにとんでもない」と批判することは、男性の仕事は金を稼ぐこと、という性役割に基づいた批判です。

国民民主党の案が養育費のみの取り決めを義務付けるものであれば、性役割に基づいた改革という面では、こういった過去の失敗と同列のものであり、男女平等とは逆行するもので私たちは反対です。

実際、他の国々では、離婚・別居時に養育時間の配分割合に応じた養育費の負担割合をとり、養育時間が長ければ割合に応じて養育費の額が下がる(例えば、養育時間の分配が半々であれば養育費負担割合も半々になります(CHILD SUPPORT GUIDELINES AND THE SHARED CUSTODY DILEMMA参照)。こういった方法の中には国連子どもの権利委員会が提唱する手法もあり、ガイドラインを設けてそれを双方に強制することで、養育費の受け取り率の割合が高い状態になっています。

つまり、共同親権各国の養育費履行確保の手法は、親が金銭面でも実際の養育の面でも、子どもに関心を向けられる体制を、婚姻内外問わず整えることで成果を上げています。仮に行政が未払いの養育費を立て替えることがあっても、このほうが財政負担も低くてすみます。婚姻外カップルにおいてのみ性役割を強制する法案は、むしろ婚姻内外、そして男女間の不平等を助長します。

日本でもダブルポケットによる金銭管理と養育時間の公平な分担は、同居カップルでは日常的になされることが増えていますし、適切な養育時間配分のモデルケースとそれに応じた養育費の負担割合の基準があれば、婚姻外カップルが共同親権でなくても進められる施策です。こういった制度の導入によって双方の養育分担が実質的な平等に近づくことこそが、男女平等を推進し、子に資することになります。

そこで、国民民主党に以下の要望をいたします。

1 今後提案する法案においては、養育費だけでなく、養育時間(面会交流)に関する取り決めを義務付けることで、子育てにおける機会均等を補償してください。

2 その際、「支払わない取り決め」や「会わない取り決め」を避けるため、複数の養育プランを参照しながら、性役割に基づかない親どうしの円滑な取り決めがなされるよう、経済面、および実際の養育面での男女平等を促してください。

3 養育時間が長ければ割合に応じて養育費の額が下がる、養育時間の配分割合に応じた養育費の負担割合をとる制度を合わせて法案に盛り込んでください。

4 その際、別居親に対するヒアリングや実態調査を行ない、支払う側の実情を把握したうえで、今後提案する法案に反映してください。